2017衆院選「併用制」「連用制」シミュレーション

2018年4月25日

連用制シミュレーション

 それでは小選挙区比例代表連用制を採用した場合のシミュレーション結果をご紹介します。

 まず並立制と同じ各ブロックの比例代表分の定数を、ドント式で計算し議席を配分します。並立制との違いは、並立制が各党の得票を自然数(1、2、3、……)で割っていった商を比較するのに対し、連用制は小選挙区での獲得議席+1から割り始めていった商を比較するという点でした。

 そこでシミュレーションでは各党の各ブロックでの小選挙区獲得議席+1から割っていくことにします。例えば東北ブロックであれば、ドント式で割り振る議席数は比例代表分の13。で除数は、自民党なら東北の小選挙区で18議席獲得しているので、19からスタート。希望の党なら1議席獲得なので2から。立憲民主党は小選挙区で議席を確保できなかったので、1からスタートとなります。

 以下がそのシミュレーション結果です。

ブロック定数
北海道8022120010
東北13044320000
北関東1906642100
南関東2207653100
東京170553310000
北陸信越1104321100
東海2107453200
近畿2809425800
中国1104231100
四国602121000
九州2006661100
比例計1760564336241600100

 これを小選挙区の議席数と足し合わせると次のようになります。

項目合計
選挙区21517188131026289
比例0564336241600100176
合計21573614425191010026465
百分率46.215.713.19.55.44.10.20.00.20.00.05.6

まとめ

 3制度の各党の獲得議席割合を百分率で一覧にすると次のようになります。「得票率」は全国の比例代表選で各党が獲得した得票数を、全国の比例代表選全体の有効投票の百分率で表したものです。「得票率」はブロックによって名簿を出していない政党があることを留意してください。

百分率
並立制60.211.810.86.22.62.40.40.00.00.00.05.6
併用制39.717.215.311.16.34.60.60.00.40.00.04.8
連用制46.215.713.19.55.44.10.20.00.20.00.05.6
得票率33.319.917.412.57.96.11.70.20.40.50.2

 小選挙区と比例代表の二つの制度を組み合わせて使うということは、2大政党制志向(=大政党優遇)と多党制志向(=中小政党確保)の間を取ることなので、どの制度を使っても得票率とは若干の差が出ます。ただ並立制は、自民党は得票率の2倍近い議席率を獲得した一方で、野党第一党の立憲民主党は得票率のほぼ半分の議席率しか得られていません。これはかなりの乖離といって良いのではないかと思います。

 今回の検証だけで何かを語るということはできないと思いますが、あえて私見を述べるとすれば、以下のような感じです。

 確かに小選挙区比例代表並立制がなければ民主党政権は生まれなかったのかもしれません。しかしよく考えると、もともと中選挙区制時代から「1.5大政党制」と揶揄されるほど自民党有利な政治基盤は変わってきませんでした。そしてそもそも2大政党制を導入するメリットは、政権が頻繁に交代する可能性を作ることによる2党間の適度な緊張関係、だったはずなのですが、実際には起きていません。日本人はそもそも自民党的保守に寄った国民性ということなのでしょう。

 1強時代と言われながらも得票率ベースでは自公合わせて半分にしか達していない状況を見ると、野党結集がなかなかできない手落ちを指摘するのも良いのですが、そもそもの自民的保守親和性をバックアップする制度として機能することのほうが、頻繁な政権交代という理想よりも実現されていると言って良いのではないかと思います。

 そもそもこのシミュレーションをしようと思ったのは、千葉商科大特別客員准教授、田中信一郎氏のツイートを見たからでした。

 今回の検証は、素人の浅知恵でやっているため、学術的な厳密性は担保できていないところもあるかと思います。ご指摘は歓迎いたします。

 ただ少なくとも2017年衆院選の結果については、あまりにも小選挙区比例代表並立制は「世論を比例的に収容すること」に関しては欠陥が度を超えたレベルで大きい制度だと言わざるをえないと思います。これを修正するのは国会にしかできないわけで……。悩ましい状況が続きます。

参考文献