2019 読書この一年

2019年12月31日
スポンサーリンク

目次

  1. 『維新支持の分析』『女性のいない民主主義』─政治
  2. 『景気の回復が感じられないのはなぜか』─経済
  3. 『「声」とメディアの社会学』─マスコミ関連書
  4. 『居るのはつらいよ』─その他

『居るのはつらいよ』─その他

 この他の分野。まず、人文書は今年も医学書院「シリーズ ケアをひらく」からヒット作が出ました。東畑開人『居るのはつらいよ─ケアとセラピーについての覚書(2月刊、6月23日読了)です。ケアとセラピーの違いという話から始まり、人が「居られる」ということはどういうことなのか、それがどれくらい難しいのかを、若き臨床心理士の奮闘劇をベースに明らかにしていきます。精神医療の現場が抱える課題、そして人がただ「居る」ことを難しくさせる「会計の声」への言及など、内容は盛りだくさんでした。2017年刊の國分功一郎『中動態の世界─意志と責任の考古学(医学書院、2017年読了)との共通性もみられ、生きづらさと社会の有り様を考える本は今年も求められているし、私も思わず手に取ってしまいました。

 精神医療といえば、村井俊哉『統合失調症(岩波新書、10月刊、11月7日読了)は統合失調症の医学的理解のための入門書です。発症の原因としては、養育環境や社会、地域性などの環境因はあまりみられないことは意外でした。ただ、確かに社会が引き起こす病気ではありませんが、しかし発症してしまってからは治療に家族や社会の支えがあるかどうかによって回復の度合いが変わってしまうという厄介な病でもあります。また患者の他害リスクは高くはなく、むしろ被害のリスクのほうが大きいことも強調されています。措置入院の意味はむしろ自殺や不慮の交通事故、食事を取らないことによる行き倒れを防ぐ意味が大きいということです。統合失調症になりやすい若い世代の読者を想定した平易な文体がありがたいです。

 大澤真幸『社会学史(講談社現代新書、3月刊、5月11日読了)は講談社現代新書がたまに出す「立つ新書」。640ページという大部です。ここで解説を書けるほど内容を理解、記憶しているわけではないのですが、通常、社会学者としてはあまり分類されることのないマルクスやフロイトなどにも紙幅が割かれているのが特徴です。

 日韓対立がさらにエスカレートした今年、大沼保昭著、聞き手江川紹子『「歴史認識」とは何か─対立の構図を超えて(中公新書、2015年刊、9月24日読了)が再び各紙に取り上げられ、話題になりました。アジア女性基金の理事を経験し、昨年亡くなった大沼による「歴史認識問題」の整理です。当事者の救済、そして「聖人」ではなく「俗人」が納得できる解決の志向というスタンスが印象的でした。

 江川紹子の仕事としては「カルト」はすぐ隣に─オウムに引き寄せられた若者たち(岩波ジュニア新書、6月刊、10月8日読了)にも触れておきたいところです。今年一斉に死刑囚の刑が執行されたオウム真理教の一連の犯罪についてあらためておさらいした本です。岩波ジュニア新書ですから中高生向けに書かれており、カルトとは何か、オウムが生まれた時代の背景などにも触れられた丁寧な構成です。感じた違和感にこだわって自分の頭で考えることの大切さを説いています。


 以上、今年読んだ本の中から印象的なものをまとめました。来年は就職。可処分時間はもちろん、大学図書館を訪ねる回数も減らさざるを得ませんし、読書環境が大きく変わります。今年と同じようなペースとはいかないでしょうが、それでも来年も読書を続けることができればいいなと思っています。

この記事で取り上げた本

 紹介順。特記なき限り2019年刊。

政治
経済
マスコミ
その他