天牛堺書店が破産し、どうやら全店で閉店状態になっているらしい(写真はきょう午後の三国ヶ丘店)。
http://www.itmedia.co.jp/news/spv/1901/28/news107.html
中小規模の書店が長らく雑誌販売を収益のメインにする構造から変化できず、無尽蔵の大規模化の波に押し負けているのは百も承知だったが、それでも天牛堺書店は古書の目利きが良く、新刊と古書の併売という(堺にずっといる人間は気付かないものだが)珍しい業態で、早い話が「良い本屋さん」だったのだ。
古書売り場には数日おきに本が入れ替わる均一価格コーナーがあって、100円とか500円の日にもなかなかの掘り起こしものがあったりした。他にも江戸時代のレシピ本とか、難しそうな哲学書とかも並んでいて、まちの本屋さんでは普通は体験できないだろう文化教養の窓としての役割が強かったようにおもう。
読書家の父や、同じ堺に生まれ育った先輩と、堺の文化環境、特に大規模書店がないことを嘆くことがよくあるが、それでも天牛堺書店の存在はちょっとした誇りであったのも事実だ。他の中小書店とは一線を画していた。
僕自身も高校時代、堺東店近くの学校に通っていたこともあり、放課後は毎日のように立ち読みしていた時期もある。もちろん参考書を中心に本も多数購入した。ポイントカードは今も持っている。堺東の街並みはこの5年で様変わりし、思い出の地もどんどん消えている。大学に入ってからは通学ルート上の三国ヶ丘店をよく使っていた。
突然の閉店で、従業員がどれくらい事前に知らされていたのかを疑う向きもあるよう。堺にとってはとても大きな文化的損失である。
(2019.1.28)