更迭とは

2019年4月11日
桜田義孝氏(首相官邸ウェブサイトから)
桜田義孝氏(首相官邸ウェブサイトから)

 桜田義孝五輪相が10日、自民党の高橋比奈子衆院議員のパーティーで「(東日本大震災の)復興よりも大事なのが高橋さん」とあいさつし、発言の責任をとって辞任しました。各社は「辞任」と「更迭」の表現を使っています。

 発言後に桜田氏は記者団に「記憶にありません」と釈明したものの、すぐさま政権や自民党幹部に情報が伝わり、政権幹部が対応を協議した上で桜田氏の辞表提出に至りました。形の上では自ら辞表を出してはいるものの、実質的には更迭です。その意味ではどちらの言葉を使っても間違いではないと思います。

 厳密にするなら、ファクトとしては「辞任」あるいは「辞表提出」でその意味は「更迭」ですから、初報の本記では2段構えで書くのが妥当なのかなと思います。例えば毎日新聞(デジタル記事、4月10日)は「(前略)安倍晋三首相と会い、自らの失言の責任を取って辞任する意向を伝えた。(略)首相が事実上の更迭に踏み切った」と書いています。

 時事通信は一報段階で「更迭」を使いました。「事実上の」も付けず、シンプルに「更迭」と表現しています。

 よく考えると、閣僚本人の意に背いて首相が閣僚を直接辞めさせることを指す言葉としては、更迭は更迭ですが、むしろ憲法68条にある「罷免」と表現するのが適切です。民間職なら「解任」とかになるのでしょうか。

 つまり政治記事で「更迭」と書く場面は大体、事実上の更迭で、逆に言えば「更迭」と書いた時点でもうそれは事実上の更迭と同義なのでしょう。こう考えると「首相が更迭する意向を固めた」という表現は、一報として優れているなあと思ったのです。