映画『カモン カモン』

 ニューヨークで、ラジオジャーナリストとして各地の子どもにインタビューする仕事をしている主人公・ジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から頼まれて9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)を数日間預かることになった。ジェシーは好奇心旺盛でそそっかしく、それでいて孤独や不安にもさいなまれる、一言で言えば手のかかる子どもであった。

 確かにその手のかかり方は、観客もジョニーに同情してしまうほどのものである。しかしクタクタになったジョニーがヴィヴと電話で交わす会話によって、ジェシーが何を考えてそういうそそっかしくて面倒な行動を取っているかが解説される。

 つまりはとにかく、ジェシーの混沌とした表現に対してきちんと耳を傾けることが大事なのだ、ということがジョニーとヴィヴとの間で確認されていく。これはジョニーがそれまでしてきたジャーナリストの仕事と通底している。

 この映画自体も、ナレーションはなく、ひたすらジョニー、ジェシー、ヴィヴの3人の会話に観客が耳を傾けながらストーリーを理解していく構造になっている。そういう意味では、観客にも多少負荷があるし、ストーリーも明確な起伏があるというわけではない。

 ただ次第にジョニーとジェシーの関係は縮まっていく。それは決して、どちらかがどちらかに合わせられるようになったから、というものではない。ジェシーはジョニーを信じられるようになり、ジョニーはジェシーから学び取る。その相互性が画面からうかがえたとき、大きな感動を覚えた。

 決して耳を傾けたところで分かりやすい答えが提示されるわけではないが、統率された調和とはちがう、混沌としての相互性が人間同士の間では起こる。だからこそ未来への期待が生じるし、人間はそれを信じて混沌に耳を傾けなければならないのだろう。

(マイク・ミルズ監督、2021年、アメリカ、原題『C’MON C’MON』)=2022年4月22日、TOHOシネマズなんば別館で鑑賞。