新聞記事と放送ニュースの文体比較(2)米兵・日本人女性死亡事件

2019年4月15日
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 新聞記事と放送ニュースの文体を比較するシリーズ。今回は事件の一報から、新たに事実が判明していく流れを追っていこうと思います。

 題材にするのは、沖縄県北谷町のアパートで米兵と日本人女性が死亡しているのが見つかった事件のニュースです。

一報段階

47NEWS 2019年4月13日午後1時28分配信
 13日午前7時25分ごろ、沖縄県北谷町桑江のアパートで、男女2人が血を流して倒れていると110番があり、2人とも現場で死亡が確認された。在日米軍は、男性が海兵隊員とみられると明らかにした。米軍関係者によると、男性が日本人女性を殺害し、自殺したという情報がある。
 県警が身元確認を急ぐとともに、詳しい状況を調べている。
 在沖縄米海兵隊は共同通信の取材に「米海兵隊第3海兵師団の隊員とみられる人物と、沖縄県民が死亡したことを把握している。大変悲しい事件であり、捜査を全面的に支援する。海軍犯罪捜査局が沖縄県警に協力している」とコメントした。

【JFNニュース 2019年4月13日午後2時55分放送】
 けさ、沖縄県北谷町のアパートで男女2人が死亡しているのが見つかり、在日アメリカ軍は、死亡した男性が海兵隊員とみられると明らかにしました。アメリカ軍関係者によりますと、男性が日本人の女性を殺害し、自殺したという情報があるということです。警察は身元の確認を急ぐとともに、詳しい状況を調べています。

 一般に新聞で事件の一報原稿は確定的な事実を先に書く原則があり、具体的にはこの記事のように通報事実、死亡確認から書くというのが普通です。このニュースのバリューは米軍がらみの事件だということにありますが、そこから書くわけではないということです。

 これは放送でもおおむね同じようですが、この原稿では時間の都合上、通報事実は省かれています。

 またこの種の原稿では、新聞が「県警」と書くのに対し、放送では「警察」と呼ぶのも一般的な傾向だと言えます。

身元確認

47NEWS 2019年4月13日午後7時5分配信
 沖縄県北谷町のアパートで13日午前、死亡しているのが見つかった男女は、在沖米海兵隊所属の男性海軍兵(32)と住人の日本人女性(44)で、交際していたとみられることが同日午後、県警などへの取材で分かった。どちらの体にも刃物のようなものによる刺し傷があったことも判明。県警は2人の死因や、トラブルの有無を調べている。
 県警によると、2人は寝室のベッドで倒れていた。女性宅には外部から侵入した形跡はなく、海軍兵は12日夜からこの部屋にいた。
 関係者によると、海軍兵は女性を殺害後、自殺した可能性があるという。

【JFNニュース 2019年4月13日午後6時55分放送】
 沖縄県北谷町のアパートできょう午前、男女2人が死亡しているのが見つかった事件で、2人は、アメリカ海兵隊の男性海軍兵と、この部屋に住む日本人女性で、交際していたとみられることがわかりました。関係者によりますと、女性を殺害した後自殺した可能性があります。警察は2人の死亡原因やトラブルがなかったかどうかを調べています。

 新聞体では、新たに判明した確定的な事実が、(1)男女の身元、(2)双方の体に刃物のようなものによる刺し傷があったこと、(3)2人が寝室のベッドで倒れていたこと、(4)外部から侵入した形跡がないこと、(5)海軍兵が12日夜から部屋にいたこと、の5点です。

 このうち放送では(1)しか取り上げられていません。JFNニュースの尺が短いことが大要因であるのはもちろんですが、今回のメインファクトが身元の判明と、2人が交際していたとみられることであることから、それ以外の要素を省き、事件の構図が分かりやすくなるようにしたのでは?と推測します。ただ、両方の体に刺し傷があることは、無理心中の可能性に説得力をもたせる要素ではあるため、やはり尺の短さが惜しいなあという気はします。

 また、県警の捜査方針と無理心中の可能性の順番が入れ替わっています。これは本連載第1回でも推論したとおり、放送では関連した話題をひと続きにして、耳で聞いただけでも理解しやすいようにしているものとみられます。

知事反応

47NEWS 2019年4月14日午後7時39分配信
 沖縄県北谷町のアパートで、在沖縄米海兵隊所属の男性海軍兵(32)と、住人の日本人女性(44)が死亡しているのが見つかったことを受け、玉城デニー知事は、在沖縄米軍トップを兼務するエリック・スミス在日海兵隊司令官に「県民の尊い命が失われたことは深い悲しみで、激しい怒りを覚える」と伝えた。うるま市で14日、記者団に明らかにした。
 海軍兵は女性を殺害後、自殺した可能性がある。スミス氏は13日午後、玉城氏に2人が交際していたことや、県警の捜査に全面的に協力することなどを電話で説明した。「ひとえに私の責任だ」とも話したという。

【JFNニュース 2019年4月14日午後10時55分放送】
 沖縄県北谷町のアパートで昨日、アメリカ海軍兵の男性日本人の女性が死亡しているのが見つかったことを受け、沖縄県の玉城知事は、沖縄駐留アメリカ軍のトップに対し「県民の命が失われたことに激しい怒りを覚える」と伝えました。死亡していた32歳の海軍兵は、発見されたアパートに住む44歳の日本人女性を殺害した後、自殺した可能性があります。

 死亡した海軍兵の基本的な情報について、新聞体では「在沖縄米海兵隊所属の男性海軍兵(32)」とひと続きに書いているのに対し、放送原稿では1文目で「アメリカ海軍兵の男性」、2文目で「32歳の海軍兵」と所属・性別、年齢を分けて伝えています。一度に聞いて理解できる情報に限りがあることを踏まえて、1文に含める要素を減らす工夫ではないかと思われます。

 また女性の方も、新聞体では「住人の日本人女性(44)」と書いているのを、1文目は「日本人の女性」とし、2文目は「(海軍兵が)発見されたアパートに住む44歳の日本人女性」と書いています。アパートの住人である要素が分離されていることは、海軍兵の例に似ています。また、新聞では2回目以降、単に「女性」と書いていますが、放送では「日本人女性」というキーワードを繰り返しているのも特徴的です。

 なお新聞でも放送でも、原稿の主題を提示する前置きの部分は、「無理心中したとみられるのを受け」などとせず、あくまでも「死亡しているのが見つかったことを受け」としているのもポイントです。無理心中の可能性がまだ流動的だという判断と思われます。