2017衆院選「併用制」「連用制」シミュレーション

2018年4月25日
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 現在日本の衆院選は小選挙区比例代表並立制を用いています。小選挙区制は僅差だろうが大差だろうが1人しか当選させない制度であり、死票が多く出ることから、その補完として比例代表制を組み合わせている、という説明は教科書にも載るほど常識的なものになりました。

 ただ小選挙区制と比例代表制を組み合わせる制度は「並立制」のみではありません。主なものとして他に「併用制」と「連用制」があります。

 「1強」が長らく続く中、選挙制度自体への懐疑の声も出てきています。本稿では、直近の衆院選の投票結果を基に、もし併用制や連用制が採用されていれば結果はどう変わったのかをシミュレーションします。

 第1回の今回は、3制度の違いの解説、シミュレーションのルール、そして併用制のシミュレーション結果をご紹介します。

【編注】
▽2019年5月20日 2分割していた記事を統合しました。

3制度の違いとは

 並立制、併用制、連用制はいずれも小選挙区制と比例代表制の二つを組み合わせた制度ですが、根本的な発想は異なります。並立制が小選挙区制中心の二大政党制志向なのに対し、併用制と連用制は比例代表制中心の多党制志向の制度となります。

 以下3制度とも小選挙区、比例代表双方に1票ずつの計2票を投じる制度として述べます。また比例代表ではドント式を用いることとします。

 ドント式とは各党の得票数を1、2、3、……と自然数で割ったリストを作成し、商の大きい順に議席を割り当てていく方法です。例えば定数5の選挙に4党が立候補とし、投票結果がA党100票、B党60票、C党50票、D党20票となったとすると以下のようになります。

 A党B党C党D党
得票数100605020
÷1100(1)60(2)50(3)20
÷250(3)30(5)2510
÷3251512.55
÷412.57.56.252.5
獲得議席2210

 表内の括弧は商の順位です。ちなみに定数5で5位の商が複数ある場合は、くじでどの党に5番目の議席を割り当てるか決めることになっています(衆院選は公職選挙法95条2項2号、参院選は同条3項2号)。

 さて並立制は「議院の定数を小選挙区部分と比例代表部分に分割し、それぞれで異なる方式による選挙を実施する方法」(大屋2012)で「制度ごとに開票・集計が行なわれ、両制度の得票が相互に関係することは一切ない」(同)わけです。比例復活候補を決める際に小選挙区選挙での惜敗率を考慮することはあるものの、議席数には影響しません。

 一方併用制は「全体の議席分布を比例代表制によって決定し、誰がそれぞれの政党から実際に当選する候補者になるかを決める際に小選挙区制部分の勝敗を優先する制度」(同)です。各党の議席配分は比例代表で決め、各党の当選者は小選挙区の勝利者を優先して割り当て、余った人数を各党の比例名簿上位から当選させます。

 併用制の問題は、超過議席が生じることです。「小選挙区の当選者数が、比例で得た議席数を上回った場合は超過議席として認められる」(朝日新聞2017.8.2朝刊)ため、定数を実際の議席数が超えることがあります。

 連用制は併用制の考え方を基本としつつ、超過議席を出さない制度設計になっています。小選挙区と比例代表で定数を分け(ここは並立制と同じ)、まず小選挙区での当選者を決定します。次に比例代表部分の議席をドント式で決めますが、この時、各党が小選挙区で確保した議席数で割った商までを無視します。言い換えれば、ドント式計算の除数を1から始めるのではなく、各党の小選挙区制での獲得議席+1から始めるわけです。

 連用制の比例代表部分では、小選挙区で多く当選した党ほど不利になりますが、全体の議席では世論の各党への支持割合に比例する形になるわけです。

シミュレーションのルール

 今回のシミュレーションに当たっては、実際に小選挙区比例代表並立制で行われた2017年の衆院選の投票結果を使って行います。併用制、連用制を想定するに当たり次のようなルールを設けます。

ブロックごとの議席配分

 日本の衆院選では比例代表選を全国11ブロックごとに行っており、各党の名簿もブロックごとに作られています。本来は全国一括で計算するのが併用制、連用制の趣旨に沿うと思われますが、実際の得票結果を使う性質上シミュレーションでもこのブロック制を援用します。具体的には
 (1)連用制の比例代表部分は、並立制の比例代表部分と同じ議席数とする
 (2)併用制の比例代表による議席配分は各ブロックごとに行い、全体議席は各ブロックの小選挙区数+比例代表定数とする
の2項目です。

 (2)を具体的に言えば、衆院選東北ブロックの地域では小選挙区が23、比例代表定数が13、計46議席となっています。併用制のシミュレーションをする場合は、東北地方の各党の議席を比例代表制で46議席配分し、どの候補を当選させるかについては小選挙区当選者の23人を優先する、ということです。

 本稿では触れませんが、一応想定では、比例名簿からの当選者補充は、登載順位上位から行うこととし、重複立候補者の同順位登載の場合は惜敗率で決めることにしています。

阻止条項の設定はしない

 各国の比例代表選挙では、行き過ぎた小党分立を防ぐために、議席獲得のための最低限の得票率を定めることが多くなっています。これを阻止条項と言います。ドイツ連邦議会選では5%以上の得票が必要になります。

 日本の衆院選では小選挙区選では、有効投票総数の6分の1以上を獲得しないと当選できないことになっていますが、比例代表選では特に最低得票ラインが設定されていません。そのため、併用制、連用制シミュレーションでも阻止条項は設定しないこととします。

小選挙区の議席は変わらない

 これはルールではありませんが、制度の性質上、併用制や連用制をとっても小選挙区の議席は並立制との差異は起きません。そのためシミュレーションは比例部分のみ行います。

比例のみの政党は小選挙区獲得0とみなす

 比例代表制のみに候補を出している政党は、小選挙区での議席獲得数を0とみなして計算します。連用制のドント式計算では除数を1から始めることになります。この仮定には賛否両論あるかと思いますが、実際に並立制で行われた選挙の結果を使って行う性質上、仕方ないものとしてご容赦ください。

議席譲渡はしないものとする

 今回の衆院選では比例東海ブロックで、立憲民主党の当選枠が比例名簿登載者数を上回り、1議席分を自民党に「譲渡」する形になりました(朝日新聞デジタル2017.10.23)。

 基本的に比例名簿の登載者数は各党が選挙制度を前提に決めると思われますので、議席譲渡は適用しないこととします。並立制による実数にも反映し、比例東海ブロックの立憲民主党の不足分はそのまま立憲民主党に割り当てます。

併用制

 まず併用制のシミュレートです。各党の比例代表での得票数から計算した、ブロックごとの議席数は次のようになります。

ブロック定数
北海道20662220020
東北361378421100
北関東5118111074100
南関東5520131064200
東京42141085410000
北陸信越30126632100
東海5318121263200
近畿75241281071400
中国31135552100
四国1772431000
九州552091093220
合計465165938360342530200

(自=自民党、立=立憲民主党、希=希望の党、公=公明党、共=共産党、維=日本維新の会、社=社民党、こ=日本のこころ、大=新党大地、幸=幸福実現党、支=支持政党なし)

 さて小選挙区で26人当選しているので、定数に追加して議席が増えます。さらに自民党は東北(5)、北関東(9)、南関東(5)、東京(5)、東海(3)、近畿(9)、中国(5)、四国(1)、九州(8)の各ブロックで小選挙区の当選者数が、比例代表で配分した議席数を超えています(ブロック名後の括弧内数字は超過した分)。そのためこれらの合計50議席が超過議席として認められることになります。

 以上をまとめると次のようになります。割当議席は

項目ブロック合計
割当議席(全国)165938360342530200465
選挙区当選(全国)21517188131026289
比例補充北海道0221200209
東北07742110022
北関東01097410031
南関東01096420031
東京067441000022
北陸信越0543210015
東海01076320028
近畿011647110039
中国0545210017
四国022310008
九州0889221030
小計0766552332220200252
獲得議席(全国)21593836034253020026541

 これを小選挙区比例代表並立制で行われた実際の結果と比べると次のようになります。

議席数合計
並立制28055502912112000026465
併用制21593836034253020026541
-65+38+33+31+22+14+10+2000+76

 百分率ベースでは次のようになります。

百分率
並立制60.211.810.86.22.62.40.40.00.00.00.05.6
併用制39.717.215.311.16.34.60.60.00.40.00.04.8
-20.5+5.4+4.5+4.9+3.7+2.2+0.20.0+0.40.00.0-0.8

 シミュレーションで分かった並立制との違いは次のような点になるでしょうか。

  • 全国的に小選挙区での戦いに強い政党があると、超過議席数が多くなる一方で、その政党は比例枠を食い潰すため比例復活や比例単独での当選ができなくなる
  • 自民党が単独過半数に達せず、自公合計でぎりぎり過半数という結果に
  • 立憲民主党や公明党、共産党など中小政党は議席が倍近く増える