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新聞レイアウト考(1)視線の流れ

2017年9月19日

 新聞部で部員教育を担当しているので、紙面の作り方について解説を求められることが多く、その資料を作ろうとしている。本稿はその下敷きにするための備忘録である。

新聞のレイアウトの独特さ

 新聞は数多くの情報を限られたスペースに詰め込む必要がある。しかも全ての話題を均等に伝えるのではなく、ニュースバリュー(情報の価値)に応じて割くスペースの大きさを変える。例えば、オリンピックで日本人選手が金メダルを獲得したニュースと、少年野球の県大会でどこそこの中学が優勝したというニュースが同じ日にあった場合、二つのニュースを同じ文字数で書くわけにはいかないのだ。

 ニュースバリューに応じて各記事の情報量を変えながら、かつできるだけたくさんの情報を盛り込もうとすれば、各記事の形を凹凸にして、パズルのように入り組ませていくしかないというわけだ。

 実を言うとこの解説はかなり乱暴である。本当は差し替えのしやすさとか、活字を拾って紙面を作っていた時代の技術的な要請とか、他にもいろいろ理屈はある。ただ、とりあえず今回記した理屈が最も単純で理解しやすい。

 しかしただ凹凸に組んだのでは読みにくい。そこで読者が読み進めやすいように「視線の流れ」を作ってあげる必要がある。

視線の流れの作り方

 縦書きの文章は上から下に字を連ね、右から左へ行を送る。ゆえに大まかな視線の流れは「右上から左下へ」だ。その証拠に、よく全体をつかむために本を飛ばし飛ばし読むことを「斜め読み」と言うが、斜め読みをするとき無意識的に視線は今述べた方向に流れていると思う。つまり作るべき視線の流れは「右上から左下へ」である。

 ではその流れはどうやって作ればいいのか。キーワードは「障害物」「標識」の二つだ。

 まず流れは障害物を避けるように進んでいく。右上から左下へ流したいのだから、障害物を置く場所は面の「左上」と「右下」だ。ここに長方形の記事を置くのが良い。一般的には左上に「タタミ」、右下に「カコミ」を置くことが多い。タタミは記事の左か右を縦の太線や装飾線で強調したもの。カコミは上下左右を線で囲んだ(場合によっては3辺や2辺だけのこともある)記事。いずれも「右上から左下へ」のメインストリームから独立する部分となり、ここが障害物としての役割を持つ。

 次に「標識」。これは比喩である。人間は一定の秩序の中に存在する異物や目立つものにまず視線が行くようになっている。新聞で言えばひたすら本文が並んでいる中で、写真や図表、見出しが目立ち、視線の「標識」としての役割を果たす。ならばこの標識を「右上から左下へ」の流れに沿って配置すれば、視線の流れが生まれる。

 こうした新聞レイアウトの定石を「押さえて流す」という。障害物によって流れの「外」を「押さえ」、標識を主流に「流す」わけだ。流れを作りながらも、流れの死角に障害物を置いて存在感を持たせることで面全体に目を通してもらえるようになる。

力点は四隅と中央

 今の定石を別の側面から見てみよう。障害物が左上と右下にあり、流れに沿って標識が右上から左下へ流れる。すると視線が集まるポイントは面の四隅と中央に位置することになる。これらは2本の対角線で結ばれることから「X型」のレイアウトと言われる。

 ではこの五つの力点をニュースバリューの高低に対応させるとどうなるか。

 まず流れの始点に相当する右上は文句なしに1位だ。

 次点は障害物としての存在感を示す左上か、流れに沿って中央かの2択になる。新聞が上下二つ折りにされることを考えると左上の方がより目にしやすいし、流れから外れるところにも目を通してほしいから、準トップは左上に来ることが多い。というわけで3番手は中央。

 あとは流れから外れる右下を4番手にし、どうしたって流れに沿って目を通してくれやすい左下には低バリューの記事を置く、というのが標準的なバリューの順位だ。

ハラを固めろ

 さてレイアウトを考える上で、五つの力点のうち最も意識すべき点を挙げるとすれば「中央」だ。「ハラを固めろ」という言葉すらあるくらいだ。新聞を人間の体に例えると、右上を「アタマ」、左上を「カタ」、中央を「ハラ」とか「ヘソ」とか言う。

 「ハラ」の位置に標識がないと、四隅に力点が分散されてしまい、紙面にまとまりが生まれない。中央に写真や見出しを置くのがポイントだ。場合によってはカコミ記事を中央に置くこともある。

メリハリが大事

 これは新聞に限らないが、目立たせたい部分が目立つためには、他の部分が地味でなければならない。あまり多くの種類のフォントや装飾線を使ったりすると、目立つものが多すぎてどれも標識として機能しなくなる。使うフォントの数や装飾のパターンは限定しよう。

 また「区別したつもりが区別になっていない」ということもよくある。

 例えば等間隔で並ぶ10行の文章があり、5行目と6行目の間に縦の線を引いて5行ずつ分けたとする。これを目の悪い人が眺めたとすると、文字はぼやけて黒いかたまりのようにしか見えない。縦の線もぼやけるため、5、6行目は線と一緒にぼやけて一つのかたまりのように見えてしまう。切り分けたつもりが一緒にくっついてしまうわけだから本末転倒だ。

 切り分けるためには5行目と線、6行目と線、それぞれの間にも一定の余白がなければならない。そもそも線などなくても、他の行間よりも広く余白を取っていればそれで区別できる。

 見出しについても同じことが言える。本文と見出しが近すぎると見出しが窮屈に見える。見出しを見出しとして目立たせるためには、周りに余白をとる必要がある。

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【編注】▽2017年9月27日 所属する新聞部の紙面はタブロイド判です。ブランケット判では考え方が若干異なる可能性もあります。ご容赦ください。  新聞部で部員教…
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