NHK地震速報の「322基準」

2020年5月17日

 NHKは地震が発生すると、気象庁から実際に観測したという公式情報が出る前の段階でも、地震があったことを伝える場合があります。アナウンサーは「NHKの各放送局からの情報によりますと、午前(午後)○時○分ごろ、○○地方で揺れを感じました」という原稿を読み上げ、画面のテロップ速報は「午前○時○分ごろ○○地方で地震がありました」と表示します。

 しかし公式情報が出る前に、何を根拠として「地震」を伝えるのでしょうか。例えばスタジオで揺れを感じたかどうかで判断すると、地震とは異なる現象が原因の揺れがたまたま起きた場合に誤報を伝えることになってしまいます。

 2018年9月4日、台風21号が大阪に上陸した際には、毎日放送の局舎が「ちちんぷいぷい」生放送中に揺れ、出演者が「地震ですね」「揺れを感じています」とコメントしたものの、実際には強い突風によるものだったことがすぐに分かり訂正されるという珍事がありました。

 他には緊急地震速報の発表状況を見るという手も考えられます。しかし過去には、地震計が検知したノイズや、離れた箇所で発生した複数の地震を一つの大きな地震と誤認識したことで強い揺れを予測した例もあり、地震発生事実を伝えるのに活用するのはリスクがあります。逆に大きな揺れを伴う地震でも、技術的制約などの問題で緊急地震速報が出ない例も考えられます。

 いろいろと調べていると、NHKには「322基準」というのがあることが分かりました。名古屋大学の公開セミナー「防災アカデミー」で元NHK記者の隈本邦彦さんが2009年4月21日に講演した内容の記録に登場するもので、インターネットで見ることができます(PDF)。

 これによるとNHKは全国の放送局に、気象庁や市町村にある震度計と同じ水準の震度計を設置していて、その観測データが一定の基準を満たせば、気象庁の公式発表を待たずにNHK独自の判断として「地震です」と伝えてよいことになっているそうです。この基準が「322基準」です。具体的には以下のようになっています。

震度計が全放送局に設置されており、一つが(震度─引用者注)3以上を示し、その近辺の局、例えば名古屋の放送局が3で、岐阜と三重の放送局が2以上であった場合、内規的にこれを地震を判断

 上記からNHKの震度計で震度「3」が1地点以上あり、かつ震度「2」が「2」か所以上あれば「地震」とするという基準だと思われます。

 NHK広報局が子ども向け教材として制作した動画「ニュース番組ができるまで」では2017年当時の地震報道訓練の様子が紹介されており、NHK震度計の観測情報画面を見ることができます(14分17秒ごろ)。映像中のディスプレーを見ると、金沢と福井で震度2を、京都、富山、岐阜、鳥取で震度1を観測していますが、震度地図上にある「放送基準判定結果」の欄では左から「3」「2」「2」と三つの四角い表示があり、「2」二つは赤く灯され、「3」は灰色の消灯状態になっています。

 気象庁の震度速報はおおむね地震発生後1分半、震源や津波の有無は3分後の発表を目安にしていますが、その前に地震発生を伝え、注意警戒を呼びかけるためにNHKは独自の仕組みを作っているということですね。