『女性のいない民主主義』

前田健太郎女性のいない民主主義』岩波新書(2019)

 政治学で標準的とされる概念や理論が、男性の視点に偏っているのではないかという疑問に立って各学説を検討した新書。2014年に日本の公務員数が先進国で随一の少なさ(!)であることの理由を分析した『市民を雇わない国家─日本が公務員の少ない国へと至った道』(東京大学出版会)で注目を浴びた筆者の新著です。『市民を─』に続き、キャッチーなタイトルがいいですね。

 『市民を─』では、全雇用者数に占める公務員数の割合と、公務員に占める女性の割合が比例することから、公務員数の抑制政策が女性の社会進出の妨げになっている可能性を示唆していました。ただ本筋からは外れたトピックとしての記述で、政治学者としてジェンダーの問題に真正面に取り組んだ『女性の─』が書かれるとは少々意外な感じもしました。

 本書は標準的な理論を簡単にまとめた上で、それをジェンダーの視点で見るとどうなるかという一問一答の繰り返しで展開されており、政治学の入門書として読むことも可能にしつつ、政治学がそうした視点を取り入れてこなかったという批判と両立させている面白い構成になっています。

 もっと文献参照やデータの引用が豊富であれば、という惜しさはあるものの、岩波新書というレーベルの影響もあるのかなと。フェミニズムの毀誉褒貶はありますが「自由主義やマルクス主義があらゆる政治現象を説明する道具立てを備えているのと同じように、フェミニズムもあらゆる政治現象を説明する論理を持っている」(209ページ)という著者の発見を追体験できる良書です。