今週のフロント
圡方宏史監督『さよならテレビ』(2019)

おととし秋に放送された東海テレビのテレビドキュメンタリー(→レビュー記事)を30分ほど長くして、丁寧に再編集された劇場版です。大阪・十三の第七芸術劇場で平日夕方の回に見てきました。
テレビ放送版では最後の最後までとっておかれた仕掛けが、映画版では最初に示唆されているところが一番の変化かもしれません。
主にフォーカスが当たる3人は、キャスターなのに自身を前に出そうとしないアナウンサー、ジャーナリズムを志しながらも契約社員という弱い立場で組織の論理に唯々諾々と従っているベテラン記者、派遣社員として招かれるも適性が疑われるほど基本的なミスを続けて起こしてしまう若手記者です。
劇中に登場する人物はその多くが、あらゆる組織に存在するキャラクターで、普遍性のある物語として見ることができます。おそらく見るものそれぞれが共感する対象を持ちながら見ていると思います。
問題は、普通の職場には存在しない登場人物もいるところ。それは冒頭に示した仕掛けに関わってくるので述べません。ただテレビを「さらけ出す」ことの、ある側面では偽善的にも見える試みをどう評価すればいいのか、迷い葛藤するところから、実はテレビの再生は始まるのかもしれません。
見た
映画
- 森達也監督『i ─新聞記者ドキュメント─』(2019)→レビュー記事
テレビ番組
- NHK『映像研には手を出すな!』第1話「最高の世界」伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか 原作=大童澄瞳 監督=湯浅政明(2020.1.6)
ウェブ動画
- ハリウッドザコシショウ『劇場版ハリウッドザコシショウと猿2』(2020.1.10)
聴いた
ラジオ番組
- TOKYO FM『山下達郎サンデーソングブック』「新春放談」山下達郎 ゲスト=宮治淳一
- TBSラジオ『荻上チキSession-22』「大竹まこと×荻上チキ〜新春特別対談」荻上チキ、南部広美 ゲスト=大竹まこと(2020.1.10)
読んだ
書籍
- 小塚荘一郎『AIの時代と法』岩波新書(2019)
- 佐野幹『「山月記」はなぜ国民教材となったのか』大修館書店(2013)
- ジョン・クイギン著 山形浩生訳『ゾンビ経済学―死に損ないの5つの経済思想』筑摩書房(2012)
- 松山秀明『テレビ越しの東京史─戦後首都の遠視法』青土社(2019)→レビュー記事
ウェブで読めるもの
- 朝山実『いまテレビは誰の味方なのか? 異色のドキュメント「さよならテレビ」』AERA dot.(2019.12.28)
- 有賀光太『卒論提出現場ルポ 20秒後の留年』note(2020.1.10)
- 上阪徹、中田英志郎 構成=池野花『著者に代わって本を書く、ブックライターという仕事をご存じか?』現代ビジネス(2020.1.7)
- 大童澄瞳 聞き手=川俣綾加『「映像研には手を出すな!」原作者・大童澄瞳が「これがアニメーションだよ!!」と唸る“アニメ版”の見どころ【インタビュー】』アニメ!アニメ!(2020.1.5)