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『アメリカン・スナイパー』を観てきました

2015年2月28日

崖の上大学の入試が無事終わりまして,受験勉強生活がすべて終わりました。目下,結果待ちということで,何も動けない時期であります。25日に入試が終わってはや3日目ですが,すでに生活リズムは崩れております。思えば,センター後は予備校は授業がありません。散発的に講習は入りますが,それでもやはり暇な生活ってのはよくないですね。昼まで普通に寝過ごすようなことも一度や二度ではありませんでした。センター後の切り替えが大事ですね。ぐぬぬ。

ってなわけで再びインターバルに入ってしまいましてやることがございません。一応本を読んだり調べ物をしたりするつもりではいるんですが,家に閉じこもっていても仕方ないので昨日,映画を観てまいりました。『アメリカンスナイパー』です。以下,ネタバレ注意です。

 ネタバレの前にデザインの話 

ネタバレ部分に入る前に緩衝として昨日,映画を観に行くまでの行動を少し振り返っておきます。

前夜から架空局の友人と夜通しスカイプで通話していまして,同時に架空局のコミュニティで開くネット会議で用いる資料を作っていました。議論の流れをまとめたA4サイズのPDF資料なんですけど,見やすいデザインを初めてしっかり考えてつくりました。というのも,入試の前日,帰路で立ち寄った書店で見つけた本に,初心者でもとても使いやすく理解しやすいデザインのテクニックについて書いてあったんですよね。



帰宅してからインターネットで調べてみると,この本の内容がウェブサイトになっていることがわかりました(「伝わるデザイン 研究発表のユニバーサルデザイン」)。見ていただくとわかるんですが,目を惹こうと思ってやっていた装飾が実はポスターを見づらくしていたんだ,など反省点が多く見つかります。

そういうわけで,架空局の資料にもしっかり実践しました。配色は紺・白・黒・赤の4色に絞り,図形は塗りつぶしと枠線を併用しない……。いやあ参考になりました。ぜひ皆さんもさきほどのサイトを参考にしてみてください。

夜が明けて朝飯をいただき,日中に何しようかなあと考えて映画鑑賞を思いつき,ネットで座席予約。昼に牛丼を食べてから映画館に行ってきました。

 閑話休題 

さて,では映画の話に入ります。『アメリカン・スナイパー』は,イラク戦争で卓越した狙撃の腕を持ち,160人を射殺した実在のアメリカ軍兵士であるクリス・カイルの半生を描いた映画です。

映画は戦場のシーンから始まります。ビルの屋上から市街地に向けて銃を構えるクリスの視線の先には,母と男の子が建物から出てきて何かを忍ばせているのが見えます。やがて米軍の戦車が近づくと,母は忍ばせていた手榴弾を子に渡し,子は戦車に向けて走り出す。クリスはその子に目標を定める……。その時点ですでに,この映画は戦争の概念の再考を人々に迫ります。つまり戦闘員と非戦闘員の区別がそこにはありません。過去問で読まされた西谷修『戦争論』には,近代の戦争では国民の総力が戦争に加わる,それは生活世界をも戦争に取り込むものだ,という旨の話がありますが,まさにそれです。

とかく戦争の議論になると,建前や理屈が飛び交いますが,それらをすべて空虚なものにしてしまうほど,戦争とは何かについての再考を求めるシーンがいくらでもあります。この映画で描かれる戦場は,戦場以外の何物でもなく,息遣いや生と死の交錯がそのリアルさを浮き上がらせますが,にもかかわらず静かなひとつの空気が流れているように僕には感じられます。それはクリント・イーストウッドの腕なのでしょうが,決してセンセーショナリズムに走らないのはさすがです。

印象的なのは,クリスを含めPTSDに苦しむ兵士たちの様子ですが,「国家のため」という言葉がどうも実を伴わないように感じてしまう。それはつまり「国家のため」ではなく,戦場の空気に呑まれているんですよね。国家のためなら,戦闘を勝利に導くためにはすべきではない感情的な判断をも「間違ってはいない」としてしまうあたりが,空気に呑まれた人間の悲しさを映し出します。

プロパガンダ映画だという批判の声が少なからずあるようですが,僕にはその色は全く感じられませんでした。まあもちろん反戦映画というわけでもないとは思いますが,この映画はクリスという個人の次元をひたすら貫いて作られています。英雄たる自分に苦しんだ末に,快方を見せた途端殺され,そして英雄として葬られるクリスの生き様・死に様。一見に値する映画だと思います。

映画を観たのは半年ぶりくらいでしょうか。満足した一日でした。