FM放送局のネットワーク「JFN」加盟局の一部で放送されている「JFNニュース」は、共同通信が配信する原稿を使っていることが知られています。このことを踏まえて、新聞向けの記事と放送局向けの原稿の文体の違いを調べようと、JFNニュースの内容を文字起こしする作業をしていたところ、内容に誤りを見つけてしまいました。これがいかにも「らしい」ミスだなと思いましたので、メモしておきます。
2月20日午前0時55分放送のJFNニューストップ項目は、安倍首相の連続在職日数が歴代2位タイになったという話題でした。このニュースの原稿全文は次のとおりです(読点はテキトー)。
安倍総理大臣の連続在職日数が、今日で第2次安倍内閣の発足から2248日となり、吉田茂元総理の第2次から第5次内閣と並ぶ歴代2位となりました。安倍総理はこのまま政権を保った場合、今年6月に伊藤博文、8月に佐藤栄作元総理と並び、11月20日には戦前の桂太郎を抜いて歴代単独1位となります。
おかしいところがあることに気が付きましたでしょうか。
では、ウェブで配信された同じニュースの記事を見てみます。ウェブ記事は新聞向けの原稿を要約・短縮したものになっていて、文体は新聞とほぼ同じです。
安倍晋三首相は20日、2012年12月に首相に返り咲いた第2次安倍内閣発足からの連続在職日数が2248日となり、吉田茂元首相の第2次~第5次内閣と並ぶ歴代2位となった。連続在職日数の歴代1位は、佐藤栄作の2798日。
安倍首相は2日後の22日には、06年からの第1次内閣を含めた通算日数でも、吉田内閣の通算と同じ2616日に到達。歴代4位タイとなる見通しだ。通算は、戦前の桂太郎が2886日で1位、佐藤が2位で、初代首相を務めた伊藤博文の2720日が3位だ。
このまま政権を保った場合、6月に伊藤、8月に佐藤と並ぶ。11月20日に桂を抜いて歴代単独1位となる。
放送原稿はウェブ原稿の第1、3段落の部分を要約した内容になっています。第1段落は連続日数の話をしているのに対し、第3段落は第2段落を受けて通算日数の話をしています。ところがこのことを踏まえずに、放送原稿では単純に両段落をドッキングさせて要約しているのでおかしなことになっています。「歴代2位となりました」と言いながら、さらに上に伊藤博文、佐藤栄作、桂太郎がいるという珍妙な展開になってしまっています。
共同通信の放送局向けの原稿は、新聞向け原稿を編集し直したものが中心になっています。単に「だ・である」を「です・ます」に変えているだけではないのが今の例でもよく分かります。ゆえに、こうした編集ミスもまれに起こってしまうということなんでしょうか。いかにも「らしい」ミスだなあと感じます。