映画『相撲道~サムライを継ぐ者たち~』

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 相撲部屋の稽古への密着をメインに2019年初場所の境川部屋、同年夏場所の高田川部屋の力士に密着したドキュメンタリー映画です。監督はTBSテレビ局員で「マツコの知らない世界」の元総合演出などで知られる坂田栄治。同番組で取材した稽古に感動したことがきっかけとなって、休日・有給休暇を費やして取材し、自ら製作費を費やして調達したといいます。

 冒頭、カメラは中入りの両国国技館に入っていき、満員の盛り上がりを追体験できる映像と音楽が、異様な興奮をもたらします。本作品はとにかく音の迫力が魅力的なのですが、それを保証してくれる素晴らしいオープニングです。

 200キロ近い力士が正面からぶつかり合うのは、毎日交通事故に遭うような衝撃で、そのぶつかり合いのパーンという音が気持ちいい。この魅力を最も体験できるのはやはり稽古のシーンです。勝った方が土俵に残り、次の対戦相手を指名して再び勝負するのをひたすら繰り返す「申し合い」稽古が、長時間にわたって映されるのですが、相撲素人でも見ていて全く飽きません。

 境川部屋のある力士が「壁にぶつかっているようだ」と形容するのですが、稽古を見ていると、ぶつかってきた相手を受けた側が、まさに壁のようになっているかどうかによって実力差がはっきり見えてきます。成長途上の力士は、押され方に不安があり、豪栄道、妙義龍、佐田の海といった格上の関取ともなると、まるでブレがなくどっしりと「壁」として押されているのが見て取れる。「体をつくる」とよく言いますが、まさにつくりあげられた体とはこういうことなのかと、思います。

 前半の境川部屋では豪栄道、後半の高田川部屋では竜電が主人公。豪栄道は、痛めた右上腕にテーピングもせず、稽古、本取組に臨んでしかも勝ってしまうという超人ぶりを見せつけます。2019年5月場所以降、調子を落とし最終的には引退へとつながる後のことを考えれば、この時の無理があったのかもしれませんが、けがをものともせず、ただひたすら実力を発揮していく姿は、ただのアスリートではない「関取」としての生き方とは何たるか、本人の言葉で言えば「やせ我慢」の心意気を窺えたような思いです。

 境川部屋とはうってかわって、高田川親方は時に自らまわしを着けて、弟子に技術的指導を丁寧にする指導法をとります。そこには2018年に起きた角界の暴力問題も微妙に影響しているようですが、高田川部屋の師弟の信頼関係の厚さが見えてきます。竜電はとにかく稽古に熱心で、本場所中も取り組み後に部屋に戻って筋トレに励むほどです。相撲素人ゆえ「15日中8勝できるかどうか」に懸ける相撲の世界というのを、なんとなく「半分勝つだけでいいの?」とか思ったりしていたのですが、彼らの生活を見て、それがどれだけ厳しい世界かを理解することができました。

 相撲という営みの迫力、スポーツという枠だけで捉えることの難しさ、そこに生きる人々の表情。テレビ中継や報道だけでは伝えきれない魅力が詰まった映画です。

(2021年1月3日、大阪・シアターセブンで鑑賞)

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