みをつくしても知らむとぞ思ふ

2015年4月10日

近鉄社歌について考察した記事「『走る海 光る海』」に対して,ちょこちょこと反響をいただいています。近鉄の社史を読んで,社歌の謎を探るという企画でしたがなかなか自分でも気に入っている企画です。

ところで,記事でも述べたとおり,社歌の冒頭に「海」が歌われている理由は制定当時,伊勢志摩方面の整備を進めていたからではないかという僕の推論には直接の証拠はありません。しかし,もしかしたら直接の証拠が入手できるのではないかという望みが残されていました。というのも,大阪市立中央図書館の調査窓口で近鉄社歌関連の資料について問い合わせたところ(こんな問い合わせ自体かなり難題ですが),大阪府立図書館の大阪文献データベース(外部リンク)でヒットがありました。

ヒットしたのは「イグザミナ」という雑誌で,「社歌の説法」というタイトルの記事で近鉄の社歌がとりあげられているということでした。「社歌の説法」というくらいだから,社歌制定の経緯とか,社歌に込められた思いなんかが解説されているのではないかと胸が膨らみます。

問題はこの雑誌を所蔵しているのが大阪府立中之島図書館で,調査当時はリニューアル工事のための臨時休館中だったことです。結論が出るのは少し先にお預けということになっていました。そういうわけで,社史からある程度の推論は立ったのでブログ記事は書きましたが,それは僕にとってはあくまで中間報告の意味合いが強かったのです。 

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大阪府立中之島図書館

さて,休館期間が終わりましたのでいよいよ例の雑誌記事を見に,中之島図書館に行ってきました。堂島川と土佐堀川の間に挟まれた中之島には冷たい雨が降っていまして,百人一首の有名な歌を思い出しました。

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ (元良親王)

「みをつくし」とは,航路標識の「澪標(みおつくし)」と「身を尽くし」の2つの意味が掛かっています。

朝の6時に起きて2時間かけて大学に通い,慣れない学内で授業を2コマ受けて,冷たい雨に濡れた服を重く感じながら駅までとぼとぼ歩き,やっと中之島までやってきた僕の思いはまさに「身を尽くしても知らむとぞ思ふ」。ってのはいささか言い過ぎですが期待は高まるばかり。

大阪関係の資料コーナーで職員さんに事の経緯を説明し,「イグザミナ」を持ってきてもらいました。閲覧室に移り,「イグザミナ」を開くとそこには衝撃の光景が!

近鉄社歌に関する記事はなんと1ページのみ。しかも,社歌の歌詞が大きく書かれていて下方に近鉄の簡単な紹介と「社歌の説法」コーナーの趣旨が短くかいてあるのみ。僕が想像していたものは一切書かれておらず……。他の号を見てみると他社の社歌についても同じようにとりあげられていますが,やはりこちらも社歌制定の経緯や歌詞に込められた意味などについての記述はゼロ

そこで僕は反省するのです。ああ……休館中に「イグザミナ」がどんな雑誌か調べておくべきだった,と。この雑誌は「関西から経済・社会・文化を読む総合誌」と銘打ってありまして,およそ社歌を詳しく書くような雑誌とは程遠いものでした。ぐぬぬ。

というわけで,やはり直接の証拠はつかめないまま,この近鉄社歌の話は推論を打ち立てるところで終結となります。残念。

 おまけ 

骨折り損のくだびれ儲けになっちゃったので,天王寺で駅うどんを食べました。駅うどんというと安いのがウリで味はそこまで……,という感じが多いんですが,JR天王寺駅の阪和線ホームにある「天王寺うどん」は安くて美味しいのでとても気に入っています。