見た・聴いた・読んだ 2020.2.10-16

2020年2月17日

今週のフロント

展覧会『インポッシブル・アーキテクチャー─建築家たちの夢』国立国際美術館
インポッシブル・アーキテクチャー─建築家たちの夢』 展開催中の国立国際美術館

 構想されながら実際には建築されなかったもの、端から実現させるつもりのない批評的提案など、20世紀以降の内外のアンビルト作品を集めた展覧会。

 ほぼ年代順に展示されており、初めに登場するのはソ連やドイツのプロパガンダ建築たち。ロシア・アーバンギャルドの象徴的作品、ウラジーミル・タトリンの「第3インターナショナル記念塔」は二重らせん構造の内部に下から立方体、三角錐、円柱、半球のフォルムが設けられています。それぞれ、立法、行政、情報局、ラジオが入り、各フォルムは1年、1か月、1日、1時間の各周期で回転するという構想だったそうです。ぱっと見て唯物史観を連想させ、見ているだけで楽しい作品です。

 黒川紀章、菊竹清訓ら戦後日本のメタボリズム運動も手厚く紹介されます。こちらも二重らせんを基本とした垂直型の構造物で構成される黒川の『東京計画1961-Helix計画』は模型で見ると、凡人の私なぞには荒唐無稽に見えてしまいます。しかし、もしHelix計画を現代の東京に実現させたらというピエール=ジャン・ジルーのCG映像作品『見えない都市 #パート1 #メタボリズム』がそばで上映されており、そのリアリティーに感動しました。Helix計画は、海上への都市拡張というイメージがあったのですが、海上だけでなく陸上にも有機的に広がる構想だったので、映像作品では電車の窓外に実際のビル群と居並ぶ二重らせんが見え、花吹雪が舞います。

 展示室に大きく構えるのは、荒川修作+マドリン・ギンズ『問われているプロセス/天命反転の橋』の模型。フランスの川に架ける橋として構想されたのですが、橋のど真ん中に黒い球体やら迷路のような仕切りが存在し、SASUKEのようなアスレチック的な楽しさと、しかし本当にこれは通れるのか?という疑問が湧き上がります。

 終盤は本展覧会の目玉とも言える、ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV『新国立競技場』。元首相に「生ガキがどろっと垂れたよう」とまで言われてしまった作品ですが、ザハの「アンビルドの女王」のイメージと裏腹にこの案がいかに実現可能なものだったかを訴える展示になっています。コスト性へばかり注目が集まり、ネガティブ・キャンペーンの末に政治家のパフォーマンスの内に中止にされてしまったプロセスへの抗議がうかがえる展示となっています。(2020年2月15日に観覧)

http://www.nmao.go.jp/exhibition/2019/architect.html

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  • TBSラジオ『ACTION』「GUEST ACTION」武田砂鉄、幸坂理加 ゲスト=津田大介(2020.2.7)

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