今週のフロント
映画『mid90s』ジョナ・ヒル監督(2020)

ヒップホップとスケートカルチャーを浴びる兄への憧れをいだく、13歳の男の子スティーヴィーは、街で見かけたスケートショップを訪ねる。たむろする少年グループに自由奔放に振る舞い、そのカッコよさに魅了されたスティーヴィーはグループに近づいていく。
本作で描かれる思春期男子の内輪ノリは、懐かしくもありつつ、もはや歳をとった身から見ると危なっかしくて痛々しい。パシリですら承認の証しと思えてしまう未熟さ。ミソジニー、同性愛嫌悪的な物言いをいとわないことが男らしさと勘違いする感覚。所詮それらは背伸びした子どもに過ぎない、が、現代はそれらの行いは子どもなら許されるものでもなくなってきた。
男性なら多かれ少なかれ思い当たる節のある過去の幼さ。だが、それは果たして本当に過去のものとして決別できたものなのだろうか。映画の中で描かれる彼らのような精神性は、大人になったはずの私たちにもまだ存在しているのではないか。子どもと大人の境界線が曖昧になる、つまりミッド・ナインティーンズは今も続いている。そういう迫力のある作品だった。
(シネ・リーブル梅田で2020年10月2日鑑賞)
見た
テレビ番組
- NHK Eテレ『シュガー&シュガー』山口一郎、平手友梨奈、きゃりーぱみゅぱみゅ、上出惠悟、江島啓一、るうこ、関口香菜、ケンソン・パトリック、ELIZABETH、MIOKO、YURIYA、RIONA、竹内良太(2020.9.29)
聴いた
ラジオ番組
- TBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』「竹山、ガムテープ買ってきて!『歌詞が頭に入ってこない!自分と同じような人いますか?』」赤江珠緒、竹山隆範、宇多丸(2020.9.28)
- TBSラジオ『宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど』「元CAの愚痴」宮藤官九郎(2020.10.2)
読んだ
書籍
- J.D.サリンジャー著、村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』白水社(2006)
- 荒井裕樹『障害者差別を問いなおす』ちくま新書(2020)
- 頭木弘樹『食べることと出すこと』医学書院「シリーズ ケアをひらく」(2020)
ウェブで読めるもの
- 伊藤亜紗『『手の倫理』序(一部)』Asa Ito(2020.9.2)
- 岩佐義樹『ギョーザの漢字は? チコちゃん、それはないよ』毎日ことば(2020.10.3)
- 辻田真佐憲『「在野研究」はジャーナリズムの代替にならない』文藝春秋digital「〈視聴覚〉のニッポン考」(2020.10.2)
- 富永京子『(富永京子のモジモジ系時評)自分の言葉で綴る喜び』朝日新聞デジタル(2020.10.3)
- 福田宏樹『(著者に会いたい)『車椅子の横に立つ人 障害から見つめる「生きにくさ」』 荒井裕樹さん』朝日新聞デジタル(2020.10.3)