セット割れと朝刊紙面──「サニブラウン日本新」報道

2019年6月9日
朝日新聞大阪本社版2019年6月9日付朝刊1面。サニブラウン選手日本新記録のニュースで、前日夕刊と同様の一報を事実上再録している。
朝日新聞大阪本社版2019年6月9日付朝刊1面。サニブラウン選手日本新記録のニュースで、前日夕刊と同じような内容の一報を事実上再録している。

 陸上男子のサニブラウン・ハキーム選手が7日(日本時間8日午前)、アメリカの大会で9秒97の日本新記録を出したニュース。5全国紙(大阪本社発行分)では8日付夕刊の早版からサイド記事も含めて掲載されましたが、大きなニュースだけに9日付朝刊でも改めて掲載されています。

 夕刊を読む人は今や少数派です。実際、新聞通信調査会の2017年の調査では、朝刊を「読まない」と答えた人が31.4%だったのに対し、夕刊を「読まない」と答えた人は71.0%に上っています。

 こうした事情もあり、かつては夕刊既報は翌日朝刊に再録しないのが当然でしたが、現在は再録が増えています。それでも2015年頃は、続報や切り口を変えた内容を中心にしたり、見出しや写真を変えたりして、夕朝のダブり感を減らすのが原則の風潮だったようですが、最近では夕刊の見出しがそのまま朝刊にも載ることが増えています。

 今回の日本新記録を伝えるニュースでも5全国紙と京都新聞、神戸新聞を見ると、サニブラウン選手の経歴を夕朝刊ともに1面に掲載したり(読売、産経、神戸)、ほぼ同じ見出しを取ったり(朝日)する例が多々見られました。

 毎日、産経、京都、神戸は1面にサイド記事を載せて「単なる再録」となるのを回避しています。毎日は選手のコメントを、産経は中高時代に選手を指導した監督のコメントを、それぞれ中心にしたサイド記事。神戸は本人によるレースの分析を軸としたサイド記事(時事電)。京都は選手のこれまでの歩みをまとめたサイド記事(共同電)でした。

 一方で朝日と読売は、ゴールする選手の大きな写真と、夕刊とほぼ同内容の本記などを載せるのみの素っ気なさ。セット割れを前提に紙面を製作しているような感じがします。

1面記事見出し

 いずれも夕刊は「4版」、朝刊は「14版」。ただし朝日朝刊は「14版△」、京都夕刊は「7版」、同朝刊は「17版」。

  • 朝日
    • 夕刊「サニブラウン9秒97、100メートル日本新」(写真付き)
    • 朝刊「サニブラウン9秒97、100メートル日本新」(写真付き)
  • 毎日
    • 夕刊「サニブラウン9秒97/日本新、桐生超え/陸上100メートル、全米大学選手権」(写真付き)「米で体鍛え上げ」「ベスト良かった」=談話
    • 朝刊「サニブラウン9秒97/日本新も通過点/陸上100メートル」(写真付き)
  • 読売
    • 夕刊「サニブラウン9秒97/100メートル、日本新」「東京五輪へまだ伸びしろ」(写真、談話、略歴、表付き)
    • 朝刊「9秒97/サニブラウン、100メートル桐生超え」(写真、談話付き)
  • 産経
    • 夕刊「9秒97日本新/サニブラウン、桐生超え、男子100メートル」(写真2枚、経歴付き)
    • 朝刊「サニブラウン9秒97、その先へ/日本新『もう少しいいタイム出た』」「『東京五輪は彼の大会になる』」(写真、談話付き)
  • 日経
    • 夕刊「サニブラウン、9秒97日本新/陸上100、桐生の記録更新」(写真付き)
    • 朝刊=インデックスでの紹介のみ(「サニブラウン9秒97」、写真付き)
  • 神戸
    • 夕刊「サニブラウン、9秒97/陸上100メートル日本新、桐生超え/9秒台2度、日本人初」「世界認める逸材/必然の記録更新」(写真2枚、経歴、表付き)
    • 朝刊「『もう少し速く走れた』/世界見据え、喜びより悔しさ/サニブラウン9秒97」写真、経歴
  • 京都
    • 夕刊「サニブラウン9秒97日本新/男子100、桐生の記録更新」「世界認める逸材、米で進化」(写真、経歴付き)
    • 朝刊「9秒97、五輪に期待/サニブラウン、男子100日本新」(写真付き)

参考文献