見た・聴いた・読んだ 2019.11.4-10

今週のフロント

安田純平、危険地報道を考えるジャーナリストの会『自己検証・危険地報道』集英社新書(2019)

 フリージャーナリストの安田純平さんが、2015年6月から3年4か月にわたりシリアで武装勢力に拘束された事件を受けて、安田さん本人と、安田さん救出のために独自に情報収集や政府への働き掛けなどをしたジャーナリスト集団が、事件時に家族や政府、ジャーナリストは何をすべきで、何をせざるべきだったのか、ジャーナリストの仕事の意義を社会にどう伝えればよいのかを検証した本です。会が主催した危険地報道報告会での安田さんの講演録に加え、座談会などが収録されています。

 危険地報道の意義などについては私なりに理解し、尊重しているつもりなのでそうした部分に関しては基本的にうなずきながら読んだのですが、ジャーナリストや日本人が拘束されたときに周りがどうすべきかという議論については、事は単純ではないという感想を持ちました。

 安田さん本人としては、不確実な情報を報道されることはそれに付け込んだ正体不明の自称仲介者が家族や政府を混乱させ、またそうした人間を事件に介在させることでかえって拘束を長引かせるとして、国内での誘拐や立てこもり事件同様、何らかの枠組みで報道を自粛する取り組みが必要だという論でした。

 国内の事件では情報を提供する側が基本的に警察に絞られており、抜け駆けするメディアも考えにくい一方、紛争地帯での人質事件となると海外メディアや武装勢力によるSNS広報などもあり、自粛が効果的にならないのではないかと思いましたし、座談会でも実際同様の指摘がありました。

 しかし事が人命に関わることなのに、不確実な情報を報じることがどのような影響を及ぼすかが危険地取材を経験するジャーナリストと、それ以外の人らの間で認識に差があるかもしれないとは感じました。その意味で当事者である安田さんが何を望むのかを記録として残した本書の意義は大きいと思います。

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