神戸大学附属図書館の学生協働サークルULiCSの企画で、学内初のビブリオバトル(書評合戦)が開催されたので観覧参加してきた(開催概要=附属図書館サイト)。学生5人がバトラー(発表者)を務めていた。
紹介されたのは下記5作。文学3作、自然科学系2作になった。
- アレクサンドル・デュマ『三銃士』角川文庫(3分冊)
- 一條次郎『レプリカたちの夜』新潮文庫
- 朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』中央公論新社
- 森田真生『数学の贈り物』ミシマ社
- 伊東俊太郎『近代科学の源流』中公文庫
ビブリオバトルに参加すること自体が初めてなので確たることは言えないが、ショーイベントとして市中で行われているようなものはバトラーの選抜とかもあるだろうが、この企画は学生が参加してきていることもあるのかみんなたどたどしい感じの発表で、むしろ聞き手が試されるものだったように思う。
ディスカッション(質疑応答)の時間で、他の参加者は割と本との出会いの経緯や、その本をどう読むかという視点の質問を多く投げかけていたように思う。書評というよりは、読書という行為や読書する主体への興味があったのだろうか。
僕は乱読派で本について知りたいという志向が強かったので、もう少し本の内容について概要的にまとめて説明してから、バトラーの感想、主張などを述べてほしかったと思う。そういう意味では消化不良の感はあるのだが、この手のイベントがこれまで我が大学でなかったというのもなんだか寂しい話ではある。学生だけでなく図書館員や教員の参加も欲しいところで、欲を言えば観覧者側にも識者がいるともう少し面白いイベントになる気がする。
発表が面白かったのは『死にがいを求めて生きているの』(文学部2年女子)と『数学の贈り物』(理学部物理学科3年男子)だった。
前者は今回のビブリオバトルの企画側の1人でもあるようで、作品の中で、友達に目立ちたいがためにビブリオバトルを吹っ掛ける中学生が登場するらしい。ストーリーの大まかな流れもちゃんと踏まえていて、わかりやすい発表だった。
ただあくまでも、読みたいと思った本のバトラーに投票せよとのことだったので、後者に投票した。独立数学者を名乗る著者による数学エッセイ集で、バトラーはそのうち一つのエッセイを取り上げて、意味がわからないものに意味を与えることで数学は発展してきたという歴史を紹介した。具体的には「○人に○個」のような形で想像がつきにくいマイナスどうしの掛け算を、複素平面という概念で意味付けた例など。バトラーが「こういう経緯を知ると数学にも人間味や人情を感じられる」と評していたのが印象的だった。上手なプレゼンというわけではなかったが、光るものを感じたので一票。
優勝したのは『レプリカたちの夜』を発表した理学部3年の女子学生だった。作品への熱がよく伝わるプレゼンだったが、僕が文学を不得手としていることもあり、読みたいという感じにはあまりならなかった。