萩生田光一文部科学相が大学入学共通テストの英語民間試験について「身の丈に合わせて頑張って」と発言し、その後撤回した問題は10月30日、民間試験の導入延期論が浮上する事態に発展しました。30日の動きをまとめます。
機会格差に「身の丈」発言
大学入試は、2021年に入学する受験生の選抜から、従来のセンター試験に代わって大学入学共通テストが実施されます。このうち英語については、英検の「S-CBT」やベネッセ社の「GTEC」など7種類の民間試験の成績を活用できる制度に移行することが決まっています。
しかし民間試験は、受験生の居住地域や家庭の経済状況によって受験機会に不平等が生じるとの指摘があり、大学に送付できる成績を高校3年の4~12月に受けた原則2回分に限定するなどの対策を取りましたが、全国高校長協会が9月、延期を文部科学省に要望するなど、今なお反発の声が相次いでいます。(参照=朝日新聞デジタル)
こうした指摘について、萩生田光一文部科学相は10月24日のBSフジ「プライムニュース」で問われると「自分の身の丈に合わせて2回をきちんと選んで頑張ってもらえば」などと述べ、教育格差を容認する発言だとしてSNS上などで批判が相次ぎました。
萩生田氏は28日「説明不足な発言だった。おわびを申し上げたい」とし、さらに29日の閣議後の記者会見で「当然のことながら発言を撤回したうえで説明をしたつもりだった」と発言を撤回しました。
野党追及、与党内からも批判
一方野党側は、英語民間試験の制度自体の導入先送りを求めて萩生田氏を追及する構えを崩さず、29日には衆院文部科学委員会の理事懇談会で、30日に委員会を開くことで与野党が合意していました。
安倍晋三首相は29日、公明党の山口那津男代表との会談で、河野太郎防衛相の「雨男」発言と合わせ、閣僚の失言を陳謝。与党内からも批判の声が上がり、自民党の世耕弘成参院幹事長は「文部科学省は、私のところに一切説明に来ていない。本当に事態を収拾する気があるのか」と苦言を呈していました。
そして30日。読売新聞朝刊が政府内で導入延期論が浮上したと1面で報道。衆院文科委で萩生田氏は「仮に今の状況より混乱が進むような事態が新たに確認できるようなことになれば、(導入延期を)考えなくてはいけないかなという気持ちもある」と答弁。報道各社は政府・与党幹部が延期に言及したと相次いで報じる展開になっています。
30日の動き(時系列)
- 午前 政府内で延期論が浮上と、読売新聞朝刊が1面で報じる
- 10:35 衆院文科委で萩生田氏が、政府内で延期論が浮上したとの読売新聞報道の真偽について、国民民主党の城井崇議員に問われ「文部科学省としては議論を承知していない」と否定。「2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組ませていただきたい」と述べる
- 15:31 萩生田氏が立憲民主党の川内博史議員の質疑に対し 「仮に今の状況より混乱が進むような事態が新たに確認できるようなことになれば、考えなくてはいけないかなという気持ちもある」と答弁
- 16:31 NHKが、自民党の参院幹部が記者団に「数か月で対策が打てるなら進めてもいいが、おそらく無理だろう。今回は軌道修正し延期すべきだ」と述べたとニュースサイトで報じる
- 20:19 毎日新聞が、自公の幹事長と国対委員長が会談し、出席した与党幹部が「延期も仕方ない、という雰囲気だった。いずれにせよ混乱がないようにしてほしい」と語ったとニュースサイトで報道。官邸幹部も「実施を急がないのも一つの考えだ」との見方を示す一方、自民党の文科相経験者は「今さら延期はできない」と指摘したとして、毎日は「世論の動向をにらみつつ、現時点では格差が生じないような準備に努める方針とみられる」と伝える
- 20:34 時事通信が、自民党文教族のベテラン議員が「これだけ反対がある以上、押し切れない」と指摘し、同党幹部も「延期した方がいい。制度の詰めが甘く、進めればもっと問題が出てくる」と述べたとニュースサイトで報じる
- 21:15 朝日新聞デジタルが、自民党幹部が30日午後「延期した方がいい」と明言したと報じる一方、与党内には依然、予定通りの実施論が根強いとする
- 21:39 共同通信が、自民党幹部が「延期した方がいい。あと数カ月で文部科学省が問題点を解決するのは難しいだろう。延期するなら早く判断すべきだ」と述べたと報じる