麻生太郎金融相(副総理、財務相と兼務)が11日、95歳まで生きるには老後の蓄えが2千万円必要だとする金融庁金融審議会のワーキンググループ作成の報告書について、正式なものとしては受理しない考えを示しました。
このニュースを伝える報道各社の記事では、麻生氏の肩書表記が揺れています。各社のニュースサイトから記事本文初出から採録すると次のとおりです(ただし放送局は動画がある場合、アナウンサーの読みに沿いました)。
朝日 | 金融担当相 |
毎日 | 副総理兼金融担当相 |
読売 | 金融相 |
産経 | 財務相兼金融担当相 |
日経 | 金融相 |
東京 | 副総理兼金融担当相 |
共同 | 金融担当相 |
時事 | 金融相 |
NHK | 副総理兼金融担当大臣 |
TBS | 金融担当大臣 |
日テレ | 金融担当大臣 |
テレ朝 | 財務大臣 |
フジ | 金融担当大臣 |
テレ東 | 金融担当大臣を兼務する麻生財務大臣 |
金融庁関連のニュースであることから金融相のみを肩書とした社が最多ではありますが、毎日、東京、NHKは副総理と、産経は財務相と併記しました。
驚くべきはテレビ朝日が「財務大臣」単独としたこと。財務省の報告書ではないのにこの表記にしたのは意外でした。テレビ東京も「金融担当大臣を兼務する」と添えてはいるものの、産経の対等併記に比べると、財務相がメインであるという文脈を感じることも可能です。
財務省と金融庁はともに旧大蔵省を前身とする省庁ですが、言うまでもなく金融庁は内閣府の外局であり財務省からは独立しています。財務、金融の両大臣は別々の人が就くことが多く、現在の態勢は制度趣旨からしても例外的と言えます。
これまで金融相のポストは、小泉政権で経済政策の司令塔だった竹中平蔵氏が務めたり、民主党政権で連立相手の国民新党枠だったりと、重量級とまでは言えなくともそれなりに重視されてきただろうと思います。
逆に中央省庁再編以後、財務相と金融相を1人が兼務した例は、事務代理を除くと、麻生内閣の中川昭一氏と、中川氏の辞任を受けて就いた与謝野馨氏(経済財政相も兼務)、第2次安倍政権以降の麻生氏の3人のみです。中川、与謝野両氏は当時「財務・金融相」の呼称が一般的でした。
「副総理兼財務相兼金融相」はくどい、ということで金融相を省いた「副総理兼財務相」の肩書で報じられるのが一般的な麻生氏。金融庁マターでも金融相単独表記をしない社があることに、金融相ポストの存在感低下を感じるのは深読みがすぎるでしょうか。
【編注】
▽2019年6月12日 記事タイトルを「金融庁マターでも『財務相』?──報道各社の麻生氏の肩書」から現在のものに変更しました。