大学のレポートも「リポート」 報道のカタカナ表記

2020年1月11日

 名古屋市の名城大学で10日、3年の男子学生が男性准教授を刃物で刺した疑いで逮捕される事件がありました。報道では、授業のレポートを巡ってトラブルがあったとみられるということですが、この「レポート」の表記が揺れています。

 各社ウェブサイトでを見てみると、以下のようになっています(執筆時点で記事に語が登場する社のみ)。

 報道では英語の「report」に「リポート」という表記を当てるのが普通です。テレビ番組の中継キャスターも多くは「リポーター」と表記されます。「レポート」はつづりに沿った表記、「リポート」は英語の音に沿った表記と言えますが、現在の報道における日本語規範は原音主義ですから「リポート」のほうが使われています。

 大学のレポートも「report」から来ていますので「リポート」と表記する社が多いのは当然と言えば当然。ただ大学の授業の提出物は「レポート」ということのほうが多く、何となくしっくりこない感じもします。

 業界の用語用字慣習が、日本語一般の慣習との間に齟齬が生じることは多々あります。最たる例はIT用語の語末の長音。日本語一般の規範では「リカバリー」と伸ばすのに、IT業界では「リカバリ」と省くことが一般的です。こうした業界慣習の違いから「『リカバリー』と書く時点で記者は分かっていない」といった、いわれなき批判をしている人をSNSなどでしばしば見掛けることがありますが、あくまでも報道は報道の日本語規範に沿っているということでしかないのでしょう。

 ちなみに英科学誌「Scientific Reports」もアカデミズムの界隈ではしばしば「サイポ」と略して呼ばれるようですが、報道では「サイエンティフィック・ポーツ」と表記されます。その割に放送業界用語で「食レポ」と言うのも謎な感じがしますが、これはあくまでも符丁に過ぎませんので……。