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7都府県に緊急事態宣言、各紙の翌朝1面は

2020年4月10日

(前ページの続き)

表が目を引く読売、シンプル見出しの朝日

 読売の本記は首相の記者会見での発言を軸に、宣言を出すに至った理由や政府の考えをまとめ、紙面右下には大阪、兵庫両府県の対応に関する記事を配置しました。左側中央には飯塚恵子編集委員による「日本型の戦い、毅然と」と題した論説記事が載っています。法的根拠を持った宣言の重みを解説しつつ、欧米のようなロックダウンとは異なることも強調、首相に事態収集のための指導力を期待した上で読者にも「皆で毅然とこの危機と戦いたい」と呼び掛ける内容です。

 右上には「生活 何が変わる?何が変わらない?」というタイトルでカラーの表を置き、交通や医療、スーパー、コンビニなどの対応の概略をまとめています。目を引く位置とデザインで、これを見れば大要が分かる点で他紙に勝っていると思います。

 1面への論説記事掲載は朝日もしています。佐古浩敏ゼネラルエディター(編集局長)の「長い闘い、行動変えるとき」は、政府や自治体に対し不当な私権制限をしないよう求め、宣言の「効能」が国民一人ひとりの行動にかかっている以上は政治リーダーが丁寧な情報発信をする必要性を説きました。各個人もパニックや世代間対立を抑える必要があるとし、「この感染症との攻防は公衆衛生と人権のどちらを取るかの問題ではない」と、適切なバランスを探りながら感染爆発回避のために行動を変えていくことを促しました。

 朝日は他紙と異なり縦見出しは1記事につき1行。「施設停止など私権制限可能に」「通院・買い出しOK、娯楽施設『自粛を』」と、宣言で何が変わり、何が変わらないのかに的を絞った紙面整理になっています。シンプルだけども練られた紙面です。

 なお東京本社版では主見出しが「緊急事態宣言」の6字のみだったようです。社会不安が広がる最中に見出しを1語で打ち出すというのは、どうも煽り気味な感じがして私は好みません。真珠湾攻撃のときに現地紙ホノルル・スターブレティンが出した号外の大見出し「WAR!」を思い起こしました。ただ、紙の新聞は後世に保存、記録されるものですから、今回の宣言が時代の転換点なのだとすれば後の歴史が6字見出しを評価する可能性はあります。多くの全国紙が「多国籍軍イラクを攻撃」とした日に毎日が「湾岸戦争突入」としたのは、その好例でしょう。

日経は上部目次省略、産経「伝え続ける」社告

 日経の朝刊は通常、上1段分と左側のL字形スペースに目次「NEWS & VIEWS」を配して、当日の主要記事を紹介しています。しかし8日付紙面では左側のみに省略して記事スペースを増やしました。

 本記は他紙同様、首相の記者会見発言を軸にまとめましたが、他の記事選定には経済紙らしさが出ています。左上の準トップは政府の緊急経済対策で、縦見出しはゴシック体で4段(日経は15段組み。12段組み紙の3段分に相当)を費やし、施策をまとめたカラーの表も併せるなど大きな扱いです。右下は「日産、米で1万人一時解雇/生産停止で、ホンダは一時帰休」と、企業への打撃を伝えました。

 主見出しが最も目を引いたのは産経でしょう。ヨコ見出しの黒地の縦幅は1段半分に及びました。記者会見する安倍首相の写真も6紙で最大です。他紙は1面下部、15段組みで3段分のスペースに広告が入るのですが、産経はそれがないので記事を載せられる面積が広く、大ニュースの時には積極的に大きな活字で見出しを流すことがよくあります。

 ニュース記事は他紙同様の本記に加えて、大阪府知事の記者会見内容、緊急経済対策の3本ですが、左側は社告で埋められました。「産経新聞社」のクレジットが付いた「読者の皆さまへ/正しい情報、伝え続けます」は、新聞発行やウェブ「産経ニュース」の情報発信を継続する一方、感染拡大の際には流通網混乱や配達体制の変更などで配達が遅れる可能性があることに理解を求めました。

 その下、井口文彦・東京編集局長の「日常を取り戻すために」は論説記事かと思いきや、こちらも事実上の社告。デマや差別、社会不安を抑えるためにも正確な報道をしていくこと、ウイルスを「幸福の基盤である民主主義と自由を破壊する脅威」と位置付けて言論の力で立ち向かうことを宣言し、結びに事態好転のために外出自粛への協力を呼び掛けました。民主主義と自由を破壊するのはウイルスではなく人間社会に過ぎないと考える私には共感しにくい内容ですが、産経らしい書きぶりではあると思います。

(次ページへ続く)