2022年になりました。ことしも当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。
年初恒例企画「ガンジツスゴクオモイシンブン」をお送りいたします。ことしは都合により、例年行っている鉄道を利用した新聞収集旅行は行わず、近所のコンビニで5大紙を集めるのみにとどめることになりました。簡単ではありますがその結果報告をご覧いただきます。

ガンジツスゴクオモイシンブンとは
新聞にとって元旦紙面(1月1日付朝刊)は大型企画やスクープ、政財界要人対談などを掲載し、企業の賀春広告を集めるなど、特に力を入れて製作する見せ場です。別刷りが多数作られ重量が大きくなることから、新聞流通研究の同人サークル「横浜新聞研究所」が「シンカンセンスゴクカタイアイス」のパロディーとして「ガンジツスゴクオモイシンブン」と呼んでいます。新聞収集や新聞流通研究の趣味を持つ人達の間では、元旦の新聞収集旅行が一つの風物詩となっています。
今回の収集
冒頭でもご説明したとおり、ことしは収集旅行を行いませんでしたので、大阪近郊の自宅近所のコンビニで5大紙を集めました。版数表記は、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞が大阪本社14版、読売新聞が大阪本社13S、日本経済新聞が大阪本社13版(社会面★12版)でした。
ページ数
各紙のページ数は次のとおりです。
新聞 | 総頁数 | 昨年比 | 内訳 |
---|---|---|---|
朝日 | 96 | -4 | 本紙40、ラテ24、エン16、スポ8、広告8 |
毎日 | 72 | +8 | 本紙32、エン20、スポ12、ジェンダー4、関西4 |
読売 | 84 | -2 | 本紙38、ラテ22、エン12、スポ12 |
日経 | 92 | -12 | 本紙48、文化スポ20、広告24 |
産経 | 72 | ±0 | 本紙32、ラテ20、エン8、スポ12 |
〈凡例〉ラテ=テレビ・ラジオ、エン=エンタメ、スポ=スポーツ
朝日と日経がそろって100ページの大台を割りました。また読売新聞は、1セットで40ページまで印刷できる能力を持ちながら、本紙が38ページにとどまりました。一方、毎日新聞はスポーツ特集が4ページ増え、関西特集が新たに作られたことで総ページは8増となりました。
近年の推移をグラフにしたものが下図です。

1面トップ
元旦紙面のトップはこれまで、新年を展望する大型企画や、渾身のスクープが躍る舞台となってきました。
ことしは毎日と読売が独自ダネ、朝日、日経、産経が大型連載企画でした。
毎日新聞は「ヤフコメ、露が改ざん工作 政府系メディア転載『米基地なくして』加筆か」という独自ダネ。「オシント新時代 荒れる情報の海」という連載企画第2回に位置づけられています。ロシアの政府系メディアが日本のヤフーニュースのコメント欄を翻訳して転載する際に、内容を改ざん・加筆して、米国からの離反をあおるような内容にしていたことがわかったというニュースでした。見出しのインパクトに比べると、内容に腰砕けの感が否めませんが、時代を写すニュースであることには違いないと思います。
読売新聞は「米高速炉計画、日本参加へ 『もんじゅ』技術を共有 原子力機構など、国内活用目指す」という独自ダネ。日本の原子力戦略の今後に影響しうるネタだけに、今回の5紙のトップでは最も意義のある記事と感じました。実際各社が後に追いかけているようです。カタには大阪本社のネタとみられる「大阪城─USJ、船で直結 観光『コロナ後』見据え 定期便23年春にも」も掲載されています。
さて、日本経済新聞は連載「成長の未来図」の初回。戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期に次ぎ、成長の鈍化と格差拡大により民主主義の土台が揺らぐ現在を資本主義の「3度目の危機」と位置づけています。日経の年頭連載は独自の歴史観に基づいて資本主義や日本経済が岐路に立っていると訴える内容が毎年繰り返されており、おなじみの展開です。
産経新聞は連載「主権回復 第1部 2030への処方箋」の初回。「『電子暗号』覇者がAI社会制す ビッグデータ時代の情報安全保障」という一読しても意味がよくわからない見出しに始まり、よくわからない脇道話も巻き込みながら展開する読みにくい記事となっています。要は日本がデータ流通のルール整備で主導権を握れ、という産経らしい記事となっています。
今回最も「迷」な内容と感じたのが朝日新聞です。連載「未来のデザイン」の初回(プロローグ)。なんとDREAMS COME TRUEのインタビューに始まり、中面に続くと抽象的な話がたくさん出てきて、とりあえずまずは未来を展望することから始めようということを訴えたいらしいことだけはわかるという、非常にねらいが見えにくい記事となっています。
社説
各紙の元旦社説の見出しは次のとおりです。
朝日 | 憲法75年の年明けに データの大海で人権を守る |
毎日 | 再生’22 民主政治と市民社会 つなぎ合う力が試される |
読売 | 災厄越え次の一歩踏み出そう 「平和の方法」と行動が問われる |
日経 | 資本主義を鍛え直す年にしよう |
産経は社説「主張」がない代わりに、乾正人論説委員長論文「年のはじめに さらば『おめでたい憲法』よ」を掲載しました。