逮捕前の実名報道で「おことわり」掲載紙も 京アニ放火

神戸新聞(2019年7月20日付朝刊1面)に掲載されたおとこわり(共同電)

 34人が亡くなった京都アニメーションのスタジオ放火事件では、京都府警に身柄を確保された男も、重いやけどをして治療中のため逮捕には至っていません。府警は19日の記者会見で、逮捕前としては異例の実名公表に踏み切りました。これを受け、報道各社も男を実名・容疑者呼称で報じ、一部の新聞はその判断の理由について説明する「おことわり」を20日付朝刊に掲載しました。

 筆者が確認した新聞のうち、おことわりを掲載したのは毎日、京都、神戸(共同電)。掲載しなかったのは朝日、読売、産経、日経でした。いずれも実名・容疑者呼称での報道です。

 掲載各紙のおことわりの文面を以下、採録します。

毎日

 京都アニメーション放火事件で、京都府警が名前を発表した男は逮捕されていませんが、事件の重大性、目撃情報があること、さらに府警の調べに「自分が火を放った」と認めていることなどを総合的に判断し、実名・容疑者呼称で報じることとします。

神戸(共同電)

 京都アニメーションのスタジオ放火事件で、京都府警が氏名を発表した男は逮捕されていませんが、事件の重大性に加え、けががなければ現行犯逮捕される事件であることを考慮し、実名で容疑者呼称とします。

京都

 京都アニメーション放火殺人事件で、京都府警が名前を公表した男は逮捕されていませんが、放火を認め、遺留品や行動などから容疑が明白な上、事案の重大さを考慮し、実名で容疑者呼称とします。

 東京・池袋で高齢者が運転する車が暴走した事故で容疑者呼称を使わなかった理由を説明する読売新聞記事が「事件事故の報道では、加害者の年齢や肩書、被害者との関係、被害の大きさと捜査状況等によって呼称は変わります。正答を必ず導ける便利な計算式はありません」と書いたように、一定の基準はあるとはいえ、その都度対応を変え得るのが実際のようです。

 であるならば通常とは異なる報じ方をする場合には、その判断根拠を示すのが望ましく、今回おことわりを掲載する社が出たのも当然だろうと思います。個人的には容疑者呼称を使う理由としては、共同電の「けががなければ現行犯逮捕される事件であることを考慮」という文面が最も分かりやすかったと感じます。

【謝辞】
京都新聞の確認に当たり、ツイッターのフォロワー、マネーライトさん(@mobius1941)にご協力いただきました。ありがとうございます。