見た・聴いた・読んだ 2019.10.21-27

今週のフロント

田辺俊介(編著)『日本人は右傾化したのか─データ分析で実像を読み解く』勁草書房(2019)

 「ナショナリズムの台頭」「若者の保守化」など、日本が「右傾化」しているという言説が多く出ている現在、その実態を2009年から4年おきに3回実施された大規模全国調査のデータに基づいて解き明かした書です。

 同書はいわゆるナショナリズムを、ネイションの境界を設定してその内部を純化し、外部との差異化を強調する「純化主義」、境界内部である国を愛することが必要だとする「愛国主義」、境界外部へのネガティブな主義主張を指す「排外主義」に分類し、さらにそれぞれを細分した概念に対応する形で、調査の質問を設定しています。

 興味深いデータはいくつもあるのですが、第一章の分析から紹介すると、全体的な変化は民主党政権誕生の2009年から、自民党政権復帰後の2013年への変化が大きく、そこから2017年までの変化はあまりなかったということです。では前者の変化の具体を見ると、排外主義は対中韓で強まり、アメリカを含む外国一般に対しては弱まっています。また純化主義においては、自己規定や法規範の順守など後天的にネイション内部に加入可能な要素によって規定する「市民(・政治)的純化主義」よりも、出生や血統といった変更可能な属性によって規定する「民族(・文化)的純化主義」の強まりが顕著であることが示されています。

 こうした変化がどういう背景を持ったものなのかといった詳細な分析は同書をお読みいただくとして、同書でも特に興味深くかつ今後の研究での解明が必要とされる点が若者の意識についてだと言えます。若者は右傾化しているというよりは、権威主義的な価値観が強まっています。安倍晋三政権支持の内容も、高齢層は自民党支持が実相であるのに対し、若者層は安倍首相個人の支持が強いようです。

 そして脱原発に対しても、国民全体の趨勢としては脱原発賛成のほうが多いのに、若者層に限ると反対のほうが多くなるということ。安倍首相に対する評価の規定要因も、権威主義も有意な水準で影響しているとはいえ、それよりも反平等主義や「原発利用賛成」の影響度のほうが大きいという結果に。「原発利用賛成」については原発政策による首相評価というよりは、原発が物質主義や経済成長の象徴として位置付けられており、こうした背景の考え方が安倍支持につながっているのではないかとしています。逆に嫌中嫌韓意識が安倍支持にはさほど影響していないという結果も出ている中で、安倍支持の背景が若者層で特徴的なのは、今後の社会の対応を考える上でとても重要なポイントではないかと思いました。

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