大阪維新の会代表の松井一郎大阪府知事は3日夜、大阪都構想の住民投票を巡る公明党との交渉が決裂した場合、吉村洋文大阪市長とともに任期途中で辞職して、ポストを入れ替えて出馬する考えを表明したと、報道各社が伝えています。
この選挙、朝日新聞は「出直しクロス選」と表現していますが、他社の多くは「ダブル選」と書いています。4日付朝刊はお休みでしたので、発言の初報が掲載された4日付の在阪各紙夕刊から記録します。
朝日新聞は第1社会面記事ではリード部で「出直しクロス選」と表現。見出しは「クロス選 松井氏明言/『知事のまま出直したらまた選挙 効率悪い』/都構想交渉」とあります。本文中「松井氏は『出直すならクロス(選)』と明言。」とあり、松井氏もクロス選の表現を使っていることが分かります。ちなみに知事、市長を入れ替えて出馬する構想を最初に報じたのは2月17日付の朝日新聞朝刊でした。
毎日新聞は1面トップで報じ、見出しは「大阪府知事 ダブル選明言/統一選同日 市長と入れ替わり」としています。本文では「知事と市長が入れ替わって出馬する意向を鮮明にした。松井知事がダブル選突入に踏み込んで明言したのは初めて」とあります。
読売新聞は1面準トップ「松井知事『民意問う』/4月入れ替えダブル選へ」で、本文中は「任期途中で辞職し、4月の統一地方選で知事・市長のダブル選を実施する意向」とあります。
産経新聞は第2社会面右上ですがややこしい書き方です。見出しは「『皆さんの声聞く』/松井知事、進退とクロス選言及」。本文は「近く辞職して知事・市長のダブル選に挑む考えを明らかにした」とした上で「松井氏が市長選に、吉村氏が知事選に立候補する『入れ替わり(クロス)選』になるとの認識も示した。松井氏が自身の進退とクロス選について明言するのは初めて」と記述。以降は「クロス選」を使っています。
日経新聞は第1社会面中央上「都構想区割り7日採決/公明非協力なら知事『ダブル選』明言」で、本文も「松井氏と吉村洋文市長を入れ替えて知事・市長のダブル選を実施する方針を明言した」とあります。
解説
ここからは私見ですが、(1)知事・市長がそろって(2)任期途中に辞職し(3)入れ替わって出馬する──という3要素を一言で言い表せているのは、朝日の「出直しクロス選」だと言えます。読売見出しの「入れ替えダブル選」では(2)の内容が欠けます。
ただ「出直し」は、その意味するところが何かという点で注意が必要な語とも言えます。一般の首長の出直し選は、任期途中で辞職した前職が同じ首長選挙に立候補し直すことを指します。この場合、公職選挙法259条の2の規定から、前職が再選しても新たな任期は4年間ではなく、当初の任期の残りとなります。
法律条文に「出直し」の文言があるわけではないものの、法律上特例として区別される条件の選挙を「出直し」と表現してきた報道機関にとって、今回の入れ替え選を「出直し」と表現してよいのかは議論のあるところではないかと思われます。
また「クロス選」という言葉が維新側の出馬動向に絞った表現であることも、中立的な観点から疑いが付く可能性がありますし、単純に聞き慣れない言葉なのでうまく意味が伝わらないおそれもあります。