2020元旦紙面(1)ページ数推移、1面判断

2020元旦紙面(1)ページ数推移、1面判断

2020年1月3日
新聞

 新聞社が一年の中でも特に力を入れて製作する元日付朝刊(通称・ガンジツスゴクオモイシンブン)。1日に一般紙のページ数速報記事を配信しましたが、今回から「2020元旦紙面」シリーズとして、2020年1月1日付の紙面について何回かに分けて詳しく書いていこうと思います。

 今回は一般紙の前編。1面に何を載せたかについてまとめます。また各社のページ数についても、昨年と比較します。

 入手した一般紙は以下の通りです。

  • 全国紙 朝日新聞=大阪本社14版△、毎日新聞=同14版☆、読売新聞=同14版、日本経済新聞=同14版、産経新聞=同14版
  • 地方紙 中日新聞滋賀版=滋賀10版、京都新聞=17版、京都新聞滋賀版=16版、神戸新聞=14版、大阪日日新聞、奈良新聞

〈ページ数〉朝毎経産で増、読売は22減

一般紙だけでも積み上げると10センチ前後になった。重さにして4.5キロ

 まず報道内容に入る前に、ページ数について触れておきます。新聞社の体力はページ数に表れると言われます。広告の増減がそのままページ数の多寡に反映されるからです。元旦紙面は昨年にも5全国紙と神戸新聞を入手していますので、ページ数の比較をしてみましょう。

前年比2020年2019年
朝日+10(0)+1114(40)6104(40)5
毎日+4(0)-164(32)260(32)3
読売-22(0)-290(40)4112(40)6
日経+8(0)+1112(48)5104(48)4
産経+4(0)080(32)376(32)3
神戸0(0)084(32)484(32)4

数字は左から総ページ数、本紙ページ数、別刷り冊数の順。

 近年の(平時の)ページ数減少傾向に反して6紙中4紙が総ページ数が増えるという結果になりました。日経は昨年にはなかった五輪特集の別刷りが作られ、朝日もスポーツの別刷り特集が4ページ増えているので、五輪関連の広告需要が影響しているのかもしれません。

 一方前回は全国紙トップだった読売が22ページも減らしているのは驚きました。朝日と日経がデジタルに重心を移そうとする中、読売は依然、紙優先政策を取っているだけに拍子抜けの感があります。

〈1面〉ゴーンか、独自ダネか、連載企画か

 元旦紙面が新聞社にとって重要なものであれば、その1面を飾る記事は大型企画や論説で新年を展望したり、スクープを放って社の取材力を示す機会にしたりと特別視されます。その上今年は大晦日に重大ニュースが入りました。特別背任罪などに問われている日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が無断で出国しレバノンへ渡ったというものでした。

 各社はこれらの材料をどう調理したのか見てみます。まずは文句なしの発生モノ重大ニュース、ゴーン出国の扱いを一覧にしてみます(段数は主見出しの段数で「横」は横見出し。※は15段組、他は12段組)。

  • 朝日 準トップ(4段) ゴーン被告、国外逃亡/「私はレバノンにいる」/地裁、保釈取り消し
  • 毎日 トップ(4段) ゴーン被告、海外逃亡/保釈中「今レバノン」
  • 読売 トップ(横) ゴーン被告、無断出国/保釈中レバノンに/渡航禁止守らず「逃亡」/地裁、保釈取り消し
  • 日経 準トップ(5段※) ゴーン元会長、無断出国/レバノンへ、保釈条件違反
  • 産経 3番手(3段) ゴーン被告、レバノン逃亡/声明発表、保釈取り消し
  • 中日 トップ(横) ゴーン被告海外逃亡/「レバノンにいる」声明/渡航禁止中、楽器箱で出国報道/「裁きではなく、不正から逃れた」
  • 京都 トップ(横) ゴーン被告、海外逃亡/出国禁止保釈中レバノンへ/司法を批判「有罪前提」
  • 神戸 3番手(3段) ゴーン被告、海外逃亡/渡航禁止の保釈中、「レバノンにいる」
  • 大日 2番手(4段) ゴーン前会長、海外逃亡/出国禁止保釈中、「レバノンに」声明
  • 奈良 国内・国際面2番手(4段) ゴーン被告、無断出国か/保釈中、レバノン入り表明
ゴーンに譲った独自ダネ

 毎日、読売、中日、京都(滋賀版と共通)がゴーンネタをトップに据えました。

 このうち京都新聞はゴーン、五輪連載企画、天皇新年感想の3本で1面を組んでおり、連載企画も「ゆらめく聖火」第12部の1回目で継続中のものでした。優先するネタが他にないのでゴーンをトップにしたのでしょう。

 他の3紙はいずれも独自ダネを準トップに落としています。毎日の独自ダネは、NASA長官が昨年9月の来日時に日本政府に対し、2020年代後半にも日米両国の宇宙飛行士が月面に降り立つ計画を提案したというものです。連載「米中のはざまで 安保60年」のスタートを飾る記事だったのですが、まだまだ計画の提案段階だということもあり潔くゴーンにトップの座を渡した形です。

 読売は、近鉄グループホールディングスが関西空港─夢洲間を結ぶ高速船を、大阪・関西万博開幕の2025年4月までに開業させる方針を固めたというニュース。中日は10センチ離れたドローンに無線で送電するシステムが開発されたという中日新聞らしいネタ。いずれも各社の地盤では重要かもしれませんが、ゴーンに比べれば地味なネタでした。

特ダネの朝日、エッセー?の産経

 一方でゴーンをトップから外した社は朝日、日経、産経、神戸、大阪日日、奈良。奈良新聞は普段から1面には地元ネタを優先し、県外のニュースは中の「国内・国際」面に集中させる傾向があるのでそれに沿った形です。

 独自ダネをトップに据えて勝負したのは朝日と神戸。朝日はIR汚職事件で、逮捕された衆院議員の秋元司容疑者に現金を渡した中国企業側が他の国会議員5人に現金を渡したと東京地検特捜部の調べに供述したというニュース。これは特捜取材に強い朝日らしさの出た、文句なしの特ダネです。

 神戸は教員暴行問題を受けて神戸市教育委員会が、弁護士などの外部人材を登用した学校運営の支援チームを新設するという独自ダネ。このニュース自体は地味ですが、学校教育について考えるキャンペーン報道を今年も続けていくという意志の表れと見るべきかと思います。準トップは五輪関連の連載です。

 大型連載をアタマにしたのは日経と産経。日経は「逆境の資本主義」第1回。デジタル化やグローバル化によって、資本主義が社会全体を豊かにするという「成長の公式」が揺らいでいるという筋で、連載を進めていくようです。

 産経は五輪関連の連載「灯す」第1部「つなぐ」の1回目。主見出しは「日本は五輪で再生する」。続きの中面に入ると1964年東京五輪の開催準備に心血を注いだ文部官僚の伝記など、面白い内容もあるのですが、書き出しの1面掲載部分は国の誇りについて語るコラムやエッセーのような感じで驚くほど内容がありません。2番手に論説委員長の新年論文が載っていることもあり、情報よりも主張を大きく扱う、ある意味で新年の冴えない頭にはちょうどいい(?)産経らしい紙面という感じです。

 大阪日日は、今秋実施される見通しの都構想住民投票に関する記事。とはいっても新しい内容はなく、これまでの経緯と都構想の論点を簡単にまとめ、「どんな大阪を残したいのか、真剣に考える1年である」と締める展望記事といった具合でしょうか。

 以上から分かるように、連載企画はやはりというべきか東京五輪ネタが多くを占めています。特に地方紙でも共同通信の配信原稿に頼るのではなく、地元の五輪ゆかりの人物に取材した自社原稿を載せた社が多くみられるのが特徴的です。


 次回は別刷りについて取り上げます。

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