FNN産経世論調査で不正 各紙の扱い

2020年6月20日

 フジテレビをキー局とするFNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞社の合同電話世論調査で、再委託先の業者が、実際には電話を掛けず架空の回答を入力する不正を行っていたことが分かりました。フジと産経が19日明らかにしたもので、不正は昨年5月以降の調査14回分で発覚し、14回分のサンプル総数のうち不正回答は17%に上る前代未聞の事態です。両社は調査結果に関連する放送・記事を取り消しました。

https://www.fnn.jp/articles/-/54282
 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査で、調査業務を委託していた調査会社「アダムスコミュニケーション」(本社・東京都)が再委託した「日本…
www.sankei.com

 世論調査に対する信頼を大きく損なう不祥事を各紙はどのように取り扱ったのでしょうか。現在私が滞在している三重県伊賀地方で入手した全国紙5紙と中日新聞の20日付朝刊を確認します。なお同地方は一般紙が夕刊を発行しない統合版地域です。

産経新聞

 今回の当事者である産経新聞(大阪本社13版)。当然1面でおわびするのだろうと思ったら、なんと第3社会面トップでの掲載でした。リードだけ1面で載せて詳細は中面に譲るという形式も採っておらず、1面はその日の紙面の主要記事を見出しで紹介する「きょうの紙面」4項目目に「産経・FNN世論調査 委託先が不正」とわずかにあるだけです。

 3社面の記事も見出しは縦3段と抑制的。記事は不正発覚の本記と記事取り消しの社告のみで、削除対象の記事を一覧にした表を併載しています。この表によると朝刊(東京本社版基準)で86本、夕刊(大阪本社版基準)で3本の計89本に達しました。

朝日新聞

 朝日新聞(大阪本社13版S北陸・三重)は第1社会面のカタ(左上)位置に、3段分の見出しを取りました。主見出しは「フジ・産経世論調査で不正」とFNNではなくフジを使い、産経よりも前に出しています。記事では「フジテレビによると」で書き出される段落が多く、今回の不正に関する取材対応はフジテレビが行っていることがうかがえます。

 朝日は産経以外の5紙では最も大きく紙幅を割いて伝えています。本記(本文記事)に加え、朝日新聞の調査不正防止の取り組みを紹介する記事や、メディア不信が広がると懸念する有識者(松本正生・埼玉大社会調査研究センター長、砂川浩慶・立教大教授)の見方を伝える記事を併載しています。

 朝日新聞はもともと、世論調査や選挙情勢調査などに力を入れて取り組んでいることで知られ、折に触れてどのように調査を行っているか具体的に紹介する記事を出すなど透明性の確保にも努めています。本記では「発覚の経緯や、架空の回答を除いた場合の世論調査結果についてフジテレビは『答えられない』としている」と伝えるなど、他紙に比べても厳しく書いている印象です。今回の手厚い報道は、報道機関の世論調査一般に対する信頼低下を抑えることがねらいにあるのではないかと思います。

 フジテレビと産経新聞社は19日、FNN(フジ系28局によるニュースネットワーク)と同新聞社が合同で行う世論調査で、実際には電話をしていない架空の回答が含まれる…
digital.asahi.com

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