今週のフロント
大谷基道『東京事務所の政治学─都道府県からみた中央地方関係』勁草書房(2019)

地方分権改革で国と都道府県は上下・主従関係から対等・協力関係になり、また三位一体改革では国から地方への補助金は減った今もなお、東京には都道府県の出先機関として東京事務所があります(なんと東京も都庁とは別に平河町の都道府県会館に事務室を置いています)。なぜ都道府県は今も東京事務所を置くのか、なぜ全ての都道府県が東京事務所を置くのか。この問いに中央省庁と都道府県庁の情報交換ルートとしての重要性をもって答えています。
本書を読む限りは、東京事務所が自律的に中央省庁と折衝する姿は見えません。あくまで東京事務所は都道府県庁本庁と中央省庁の間の情報回路を確保するために奔走しているイメージです。そこまでして得たい情報は、かつての補助金獲得のための政治的交渉に必要なものというよりは、都道府県が実施すべき政策・制度の形成過程に関するものが中心で、これは具体的に都道府県が動くに当たって発案者である省庁の意思を確認することが執行上のリスク、不確実性を減らす効果を持つためだということです。
東京事務所の実務、「省庁県人会」といった人事の実際なども詳しく記述されており、マニアックなテーマでありながら面白く読むことができました。
かもめ児童合唱団『インターネットブルース』ユニバーサルミュージック(2016)
TBSラジオ『伊集院光とらじおと』の名物コーナー「あれコード」で今週流れた表題曲「インターネットブルース」に度肝を抜かれました。三浦半島で活動する児童合唱団が社会の悲哀たっぷりの曲を歌い上げるシュールなアルバム。抜群に歌がうまいというわけでもなく、子どもたちがのびのびと歌っているのがとてもいい! 表題曲と、ナイアガラ・トライアングルのカバー「幸せにさよなら」がお気に入りです。このアルバムには入っていませんが、シングル「以心電信」もおすすめです。
聴いた
ラジオ番組
- TBSラジオ『荻上チキSession-22』荻上チキ、南部広美
- 特集「故・中曽根元総理が民営化した国鉄。その後、労使関係に何が起きたのか?」西岡研介(2019.12.2)
- 特集「101歳で死去。 タカ派、風見鶏、田中曽根内閣、ロン・ヤス… 様々なキャッチフレーズを持つ 『中曽根康弘・元総理』の功罪とは?」松田喬和、中北浩爾、熊沢誠(2019.12.5)
読んだ
書籍
- 伊藤亜紗『記憶する体』春秋社(2019)
- 瀬山士郎『数学にとって証明とはなにか─ピタゴラスの定理からイプシロン・デルタ論法まで』講談社ブルーバックス(2019)
- 大谷基道『東京事務所の政治学─都道府県からみた中央地方関係』勁草書房(2019)
- (編著)脇浜紀子、菅谷実『メディア・ローカリズム』中央経済社(2019)
ウェブで読めるもの
- 伊田雄馬『震災の「つらい話」は… 若者の記憶「選択的継承」進む』神戸新聞(2019.12.8)
- 今西光男『「新聞少年」という昭和の記憶 新聞が全盛期だったころ』マス・コミュニケーション研究(2010.1.31)
- 木村俊介『ノーベル賞の吉野さん、なぜ名城大へ? ゆかりないのに』朝日新聞デジタル(2019.12.8)
- 志田陽子、(聞き手)江川紹子『「公」の広報、芸術支援、そして表現の自由を考える~憲法学者の志田陽子さんに聞く』Yahoo!ニュース個人(2019.12.3)
- 三省堂「今年の新語」選考委員会『「今年の新語2019」の選評』今年の新語2019特設サイト(2019.12.4)
- そらマメさん『不思議な夢、それは現実の世界と一致する話かもしれません(キュレーションサイト)』(2019.10.7)
- 西村まさゆき『「慇懃無礼」を知らない?……今年の新語2019結果速報』デイリーポータルZ(2019.12.4)
- 日本経済新聞『自民税調、脱「聖域」へ新機軸 発足60年 定員制で裁量抑制 デジタルに対応』(2019.12.4)
- 速水健朗、(聞き手)大谷佳名『都市に住むことの本当の価値とは?──「東京一極集中の弊害」論の誤り 『東京どこに住む?』著者、速水健朗氏インタビュー』シノドス(2016.10.6)
- 前田裕之『東大と京大、経済学部100年 定年や給与・入試見直し』NIKKEI STYLE(2019.12.1)
- 森保一、(聞き手)吉田純哉『(インタビュー)被爆地がある国の五輪 サッカー東京五輪代表監督・森保一さん』朝日新聞(2019.12.7)