見た・聴いた・読んだ 2020.7.13-19

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見た・聴いた・読んだ

今週のフロント

駒村圭吾、待鳥聡史編著『統治のデザイン─日本の「憲法改正」を考えるために』弘文堂(2020)

 日本の統治機構の在り方については政治学と憲法学がそれぞれの立場で議論を積み重ねてきました。そのオールスターが安全保障、代表、議会、内閣、司法、財政、地方自治の各トピックで政治学、憲法学から1人ずつ登場し、政治学側から現状の課題と志向される改革の論点を示し、憲法学側からはその論点について憲法がどう規定しているかの解釈可能性を示しツッコミを入れていくというスリリングな構成の本です。

 本書の面白いところは、憲法典としての日本国憲法を、統治機構の「設計図」としてのみではなく、これもまた「構築物」としてみることを試みている点です。

 例えば学校の教科書にも載っている三権分立の図ですが、憲法学では権力を三つに分けて相互に均衡させることが人権保障のための要諦視され、憲法=権力分立といってもいい権威性を持ってきました。対して政治学では特に議院内閣制においては行政と立法はむしろ融合的であり、行政権拡大を批判するときに「三権分立に反する」と批判するのは生産的ではないという見方をします(竹中治堅論文。むしろ批判するならば、行政権の肥大化自体を問題視すべきだと主張している)。

 この指摘に憲法学はどう答えるのか。横大道聡論文では、高橋和之の「国民内閣制」論を紹介します。これは行政国家化、政党国家化を前提にした上で、直接民主政的なしくみを志向するもので、具体的には小選挙区制に基づく二大政党がプログラムを選挙時に提示し、そのどちらを国民が選ぶかによって事実上、国民が直接首相・内閣を選択するという手はずになります。こうなれば内閣と国会の均衡という像からは離れますが、横大道は「国民内閣制」論が憲法に違反するとは言えないとする見方が憲法学の大勢であると説明しています。

 つまり憲法学の立場であっても、設計図としての三権分立はもはや前面には出ず、個別条文の解釈可能性のほうを重視せざるを得なくなっているわけです。

 とはいっても憲法学は憲法が持つ設計図としての側面を捨て切ることはできません。なぜなら個々の制度がそれぞれに都合よく構築されてしまえば、相互の関係がいびつな状態になってしまうという懸念があるからです。三権分立で言えば、権力融合的だと憲法学の立場で言い切ることにはためらいがある。それが憲法学が規範の学としてインテグリティーを重視してきた証左とも言えます。政治学側からの統治機構改革関連の本を何冊か読んできた私としても、憲法学が何をしようとしているかの一端がうかがえたのは収穫でした。

 本書でも紹介されるように、政治学者の根岸毅は「これはこうなっているが、なぜそうなるのか?」という「理学」と、「本来これはこうあるべきなのに、なぜそうならないのか?」という「工学」の区別をあらゆる学問においてこだわったといいます。まさに「理学」の憲法学と「工学」の政治学のおもしろさを味わえる本です。巻末の駒崎圭吾によるまとめがとても良くできているのもこの本の魅力をいっそう高めています。

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