2015年2月に読んだ本を記録しておきます。今月は6冊です。
日本における叙勲制度の歴史と課題についてまとめた書。
明治政府よりも薩摩藩が先に勲章を作っちゃってたのは驚き。それだけ当時の日本が「一国」ではなかったってことですな。あとは,血盟団事件の呼び水になった売勲事件の話が面白かった。なによりも,現在においても勲章制度が戦前の勅令を根拠としているという制度基盤の危うさがなんともこの手の制度の胡散臭さを醸し出します。
(2015.2.6読了,★★★☆☆)
近世から近代に移り変わる時期の地方行政機構の変化を追った書で,その主眼は,グローバリゼーションという無境界的な権力と,国民国家という境界的な権力が民衆を統治する在り方がなぜ生じるのかというところ。なので内容は割と難解。
とりあえず押さえておくべきは,今の中央-都道府県-市町村という構図に慣れきっているとそれが当然で,その枠組みに従って幕府-藩-町村というふうに理解してしまいがちだが,それは見当違いだということです。当時の統治には,領域があってその内部は全部誰のもの,というもの(同心円状統治)ではなく,点在する集落の統治者をそれぞれ設定するというもの(モザイク状統治)でした。昔の荘園制が秀吉の一地一作人原則で改められ,次第に形骸化していく様子がそれです。それを同心円状の地方統治のあり方に変えたのが地方三規則ってやつです。今の地方統治のあり方を相対化できただけでとりあえず僕は満足。
(2015.2.15読了,★★★☆☆)
2011年,東日本大震災に隠れてあまり大きな話題にならなかった紀伊半島豪雨が,日本の災害史上特筆されるべき大規模なものであったことがわかった。そこに生きる人々の苦しみを丹念に追っている。後半の首都圏洪水の警鐘の部分はトーンダウン気味。
(2015.2.18読了,★★★☆☆)
金正男,むちゃくちゃ賢いわけでもなく,だけど決してバカではない,要は普通のおっちゃんって感じに見えた。まあ見えるだけなのかもしれんけど。
(2015.2.22読了,★★★☆☆)
戦争,戦後の動乱を生き抜いた大阪の昆布商人の奮闘を描いた,郷土の小説家・山崎豊子の処女作。こういう商人気質って惚れる部分ととても忌み嫌う部分とあります。一種のノスタルジックなものにとどまらず,そういう厭な部分もちゃんと描ききっているのが山崎豊子の大作家たる所以なんでしょうなあ。山崎豊子の作品では割と読みやすいほうです。
(2015.2.23読了,★★★★☆)
やはり印象深いのは,忠孝が避難に勝ったが故の悲劇に関する記述ですね。子よりも親を救う,武士の命である刀を取りに戻って津波にのまれる,など人間は災害時であっても急にはストレートに生を追求できないということが手にとってわかります。それで思い出したけど,少し前に連続テレビ小説で防空法が話題になったが,あの悲劇も大げさではないんだなあと。磯田さんは文章も語り口も面白いが本書も同様で満足。
(2015.2.27読了,★★★☆☆)