今週のフロント
展覧会『インポッシブル・アーキテクチャー─建築家たちの夢』国立国際美術館
構想されながら実際には建築されなかったもの、端から実現させるつもりのない批評的提案など、20世紀以降の内外のアンビルト作品を集めた展覧会。
ほぼ年代順に展示されており、初めに登場するのはソ連やドイツのプロパガンダ建築たち。ロシア・アーバンギャルドの象徴的作品、ウラジーミル・タトリンの「第3インターナショナル記念塔」は二重らせん構造の内部に下から立方体、三角錐、円柱、半球のフォルムが設けられています。それぞれ、立法、行政、情報局、ラジオが入り、各フォルムは1年、1か月、1日、1時間の各周期で回転するという構想だったそうです。ぱっと見て唯物史観を連想させ、見ているだけで楽しい作品です。
黒川紀章、菊竹清訓ら戦後日本のメタボリズム運動も手厚く紹介されます。こちらも二重らせんを基本とした垂直型の構造物で構成される黒川の『東京計画1961-Helix計画』は模型で見ると、凡人の私なぞには荒唐無稽に見えてしまいます。しかし、もしHelix計画を現代の東京に実現させたらというピエール=ジャン・ジルーのCG映像作品『見えない都市 #パート1 #メタボリズム』がそばで上映されており、そのリアリティーに感動しました。Helix計画は、海上への都市拡張というイメージがあったのですが、海上だけでなく陸上にも有機的に広がる構想だったので、映像作品では電車の窓外に実際のビル群と居並ぶ二重らせんが見え、花吹雪が舞います。
展示室に大きく構えるのは、荒川修作+マドリン・ギンズ『問われているプロセス/天命反転の橋』の模型。フランスの川に架ける橋として構想されたのですが、橋のど真ん中に黒い球体やら迷路のような仕切りが存在し、SASUKEのようなアスレチック的な楽しさと、しかし本当にこれは通れるのか?という疑問が湧き上がります。
終盤は本展覧会の目玉とも言える、ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV『新国立競技場』。元首相に「生ガキがどろっと垂れたよう」とまで言われてしまった作品ですが、ザハの「アンビルドの女王」のイメージと裏腹にこの案がいかに実現可能なものだったかを訴える展示になっています。コスト性へばかり注目が集まり、ネガティブ・キャンペーンの末に政治家のパフォーマンスの内に中止にされてしまったプロセスへの抗議がうかがえる展示となっています。(2020年2月15日に観覧)
見た
イベント
- 展覧会『インポッシブル・アーキテクチャー─建築家たちの夢』国立国際美術館で2020年2月15日鑑賞
- 展覧会『コレクション―現代日本の美意識』国立国際美術館で2020年2月15日に鑑賞
テレビ番組
- アニメ『映像研には手を出すな!』第6話「前作より進歩するべし!」伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか 原作=大童澄瞳 監督=湯浅政明(NHK、2020.2.10)
- NHK『クローズアップ現代+』「密着半年 野村克也さん 最期のメッセージ」武田真一(2020.2.12)
- NHK『ドキュメント72時間』「神戸 あの日のピアノを弾きながら」語り=吹石一恵(2020.2.14)
- 北海道テレビ『水曜どうでしょう』最新シリーズ第4夜(2020.1.22)
ウェブ動画
- YouTube『【密着#05】松之丞が六代目神田伯山になった日 〜爆笑問題大暴れ〜【毎日更新】【神田伯山ティービィー】』神田伯山ティーヴィー(2020.2.16)
聴いた
ラジオ番組
- TBSラジオ『ACTION』「GUEST ACTION」武田砂鉄、幸坂理加 ゲスト=津田大介(2020.2.7)
読んだ
書籍
- シーグリッド・ヌーネス著、 村松潔訳『友だち』新潮クレスト・ブックス(2020)
- 益尾知佐子『中国の行動原理─国内潮流が決める国際関係』中公新書(2019)
- 室井康成『事大主義─日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」』中公新書(2019)
- 渡部淳『アクティブ・ラーニングとは何か』岩波新書(2020)
ウェブで読めるもの
- 仙石慎太郎、金森勝雄、沼上幹 聞き手=大牟田透、中島鉄郎、諏訪和仁『(耕論)選択と集中、合理的?』朝日新聞デジタル(2020.2.15)
- 松本健太郎『乱用される国会の「質問主意書」と不誠実な「答弁書」 ツケは国民に』日経ビジネス(2020.2.12)
- みやーんZZ『『映像研には手を出すな!』OPとドレイク『Hotline Bling』ミームのつながり』note(2020.2.16)