2019 読書この一年

2019年12月31日
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目次

  1. 『維新支持の分析』『女性のいない民主主義』─政治
  2. 『景気の回復が感じられないのはなぜか』─経済
  3. 『「声」とメディアの社会学』─マスコミ関連書
  4. 『居るのはつらいよ』─その他

『景気の回復が感じられないのはなぜか』─経済

 私は一応(落第生ではありますが)経済学部生なので経済学関係も手に取りました。ただこちらは新刊書は少なめです。

 前日銀総裁・白川方明の日銀人生の回顧録である中央銀行─セントラルバンカーの経験した39年(東洋経済新報社、2018年刊、9月9日読了)は700ページ超の大部です。バブル崩壊からアベノミクスまでの実務家経験をベースにしつつも、理論面も押さえた内容で、学部生レベルなら読み進められるかと思います。金融システム自体が動揺する事態に直面してきた著者ゆえ、金融の安定の大切さを説き、あまり目立たないもののその安定のために日銀が行っている仕事についても触れている辺りが著者の矜持の表れと受け止めました。また日銀は常に海外主流派経済学の批判の的になってきた一方、グローバル金融危機のときには日本のバブル崩壊の経験がうまく世界的に生かされなかったことを悔やみ、批判しています。

「貸し出し予約21人待ち」の裏で
 白川方明前日銀総裁が昨秋に出した『中央銀行―セントラルバンカーの経験した39年』(東洋経済新報社)は、当時の新聞書評にも多く取り上げられており興味はあったのだ…
charlieinthefog.com

 その海外主流派経済学が近年続けてきた論争が、世界経済は長期停滞に入っているかどうかというものです。ローレンス・サマーズら著、山形浩生訳『景気の回復が感じられないのはなぜか─長期停滞論争(世界思想社、4月刊、9月13日読了)は米経済学界のスターによる議論をまとめたものです。元米財務長官サマーズ、元米FRB議長バーナンキ、ノーベル経済学賞受賞のクルーグマンらのブログや講演録の翻訳集で、山形の解説も手助けとなって内容は平易、しかし議論は最前線の知的エンターテイメントになっています。

 活動家グレタ・トゥーンベリの露出で再び環境問題への関心が高まっていますが、経済学の視角で考えるならウィリアム・ノードハウス著、磯崎香里訳『気候カジノ─経済学から見た地球温暖化問題の最適解(日経BP社、2015年刊、10月3日読了)は必読です。環境経済学のエッセンスが網羅的にまとまっています。二酸化炭素削減の枠組みにできるだけ多くの国を参加させることが大事(いわく、世界の排出量の半分に到達する程度の参加でも全く不十分!)なのですが、ではどうすればいいのかといった解決策にも示唆を与えています。

 ジャーナリストの著書としては西野智彦『平成金融史─バブル崩壊からアベノミクスまで(中公新書、4月刊、6月2日読了)が、バブル崩壊、金融機関破綻、小泉・竹中改革などの舞台裏を、政治家、大蔵・財務省、日銀、金融機関関係者への膨大な取材に基づいて生々しく描出しています。1995(平成7)年生まれの私にとっては各出来事がうまく時系列的、あるいは有機的に記憶されていない部分があるので整理に大いに役立ちました。

(次ページへ続く)