2020年3月新聞調査(1)版違いとは何か~毎日の紙面差し替え

2020年3月22日
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 2020年3月14〜16日にJRの「青春18きっぷ」を使った新聞収集旅行を行いました。旅行の様子は「2020春・18きっぷで新聞収集旅行」にまとめましたが、本記事からは新聞版数調査の結果報告を連載します。これまでの版数調査報告では各媒体ごとにまとめていましたが、今回は新聞の数が多いのでいくつかのトピックごとにご紹介していきます。

 第1回は14日(土)付朝刊の版違い比較です。全国紙や一部の地方紙は、印刷拠点からの配送にかかる時間に応じて遠隔地向け、郊外向け、都心部向けなどのように紙面製作の締め切りを複数設定しています。この設定のことを「版建て」と言います。

 このため同じ日付の同じ新聞でも、内容が異なります。記事に新しい情報を追加したり、より優れた紙面とするためにレイアウトや見出しを再考の上で変更したりされるのです。今回は深夜のニュースがどの版にどの程度反映されているかを見ていきたいと思います。

 なお本連載では、新聞用語の解説も適宜加えながら、新聞製作・流通事情についてよく知らない方にも楽しんでいただけるような記述を心掛けたいと思います。


2020年3月新聞調査」記事一覧

  1. 版違いとは何か~毎日の紙面差し替え 2020年3月22日公開
  2. 版ごとの情報更新状況 2020年3月24日公開
  3. 本支社による紙面の違い 2020年3月27日公開

2020春・18きっぷで新聞収集旅行」もご覧ください


最終版の追っ掛けを取った毎日

 この比較をするのに最も都合の良い形で版違いを入手できたのは毎日新聞東京本社版でした。「▲統12版」「13版」「14版」「14☆版」の4個版が手元にあります。毎日の場合「▲」は統合版を表します。通常、毎日朝刊の最終版(最も締め切りの遅い版)は「14版」ですが、この日はその追っ掛けを取っていることになります。

 統合版 夕刊のない地域向けの朝刊。逆に朝刊と夕刊両方がある地域に配られる新聞はセット版と呼ばれる。

 追っ掛け 予定されている版を製作した後に重要なニュースが入った場合などに、配送にまだ取り掛かっていない地域向けに製作した臨時の版。版数表示に記号を付して示され、例えば朝日新聞の場合「●」が付く(13版の追っ掛けなら「13版●」)。誤りが見つかったり情勢が変わったりして、既に作った版をそのまま配布することに問題がある場合は、その版を破棄した上で新たに作り直すこともある。この場合は「取り直し」と呼び、社によっては追っ掛けと記号を分けて表示する(朝日の場合は「◎」)。

2020年3月14日(土)付毎日新聞東京本社版朝刊。左上から時計回りに「▲統12版」「13版」「14版」「14☆版」

 1面は「13版」から「14☆版」にかけて差し替えが続きました。トップ記事は一貫して、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う東京株式市場の株価暴落です。「13版」ではこの記事で、13日のニューヨーク株式市場について触れられていませんが、「14版」では取引が急反発で始まり、値上がり幅が一時1300ドルを超えたことが追記されました。

 また1面中央の記事も新型コロナ関連で、トランプ米大統領が私見と断った上で今夏の東京五輪・パラリンピックの1年延期に言及したという内容ですが、「14版」で末尾に関連記事として、ギリシャでの聖火リレー中止のアテネ発共同電を付けました。

 ○○電 通信社の配信記事のこと。自らで新聞発行や放送を行うのではなく、報道機関などに記事を配信することを主な業務とする通信社(News Agency)が世界各地にあり、AP通信(アメリカ)、AFP通信(フランス)、ロイター通信(イギリス)などが有名。日本では共同通信時事通信が二大通信社と呼ばれる。

 さらに「14☆版」ではトランプ氏が約1週間前に会談したブラジルのボルソナロ大統領の感染が確認されたと米メディアが報じたとするワシントン発共同電も追加されます。その後大統領自身が実際は陰性だったとSNSで明らかにしています。

 「▲統12版」から「13版」にかけては、1面には目立った変更が見られません。しかし中面を開いてみますと、国際面で「▲統12版」にだけ載っていない記事に気付きました。「世界の死者5000人超え」という新型コロナ関連の時事電です。社会面を見ると実況天気図が「▲統12版」は13日15時現在なのに対し、「13版」以降は13日18時現在になっています。

 このように、新聞は配達地域によって複数の締め切りを設けることで、より新しいニュースを可能な範囲で反映させていく工夫をしているわけです。

(次ページへつづく)