2020年3月新聞調査(3)本支社による紙面の違い

2020年3月27日

 2020年3月14~16日に実施した新聞調査の報告連載。第3回は全国紙の本支社別紙面比較です。全国紙は全国の主要都市に地域本支社を置いてそれぞれで紙面を発行しています。その違いを見比べてみたいと思います。

 全国紙 ある地方や都道府県、地域のみを対象とする地方紙とは異なり、全国向けにニュースを伝える新聞。スポーツ紙や専門紙にも用いる場合もあるが、通常は幅広い分野のニュースを扱って不特定多数の読者を想定する一般紙に対して使う言葉であり、日本では朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の三大紙に日本経済新聞、産経新聞を加えた五大紙を指すことが多い。首都に中枢機能を持つことから中央紙と呼ばれることもある。


2020年3月新聞調査」記事一覧

  1. 版違いとは何か~毎日の紙面差し替え 2020年3月22日公開
  2. 版ごとの情報更新状況 2020年3月24日公開
  3. 本支社による紙面の違い 2020年3月27日公開
  4. 日経のカラー印刷事情 2020年4月8日公開
  5. 地方紙の地域別差し替え 2020年5月31日公開

2020春・18きっぷで新聞収集旅行」もご覧ください


全国紙の本支社事情

 朝日、毎日、読売の三大紙はいずれも大阪、東京、西部(福岡または北九州)の本社を置いています。朝日、毎日は地域本社扱いですが、読売は各本社が法人格を持っています。これに加えて名古屋にも朝日が名古屋本社、毎日が中部本社、読売が中部支社(東京本社管轄)を、さらに札幌には3社とも東京本社管轄の北海道支社を置いています。

 日経は本社は東京と大阪のみで、発行機能を持つ支社としては札幌、名古屋、西部(福岡)があります。大阪本社には京都、神戸の両支社がありますがこちらは発行機能はありません。

 産経は東京と大阪のみに本社があり、福岡には大阪本社西部本部を置いて九州・山口特別版を発行しています。

 ただし発行本支社全てが自前で紙面製作を行っているわけではありません。大阪の独自編集色は依然強くありますが、名古屋紙面は本支社がある4紙とも紙面製作は東京本社に集約されています。西部も戦中に大陸への足掛かりとなる重要拠点として位置付けられた歴史があり、現在でも福岡では特に北九州地域で全国紙のシェアが大きくなっていますが、紙面製作は東京が担う例が増えています。

 日経は原則全国共通紙面で、本支社によって変わるのは広告や社会面くらいになっています。ただし1面などでも完全に共通化しているというわけではなさそうで、昨夏の参院選で東京と大阪で1面の編集が微妙に異なる例が確認されています。

朝日新聞

 ここからは今回入手した紙面をもとに比較していきたいと思います。最初は朝日新聞です。

 朝日はまず題字の地紋が東西で異なります。東京本社は桜ですが、名古屋本社以西では葦が描かれています。

左から大阪本社セット版、名古屋本社、東京本社セット版、同統合版

 紙齢も東西で1608号分の差があります。これは東西での創刊の由来が関係しているとみられます。大阪の朝日は1879年に創刊したのに対し、東京の朝日は1888年に「めさまし新聞」を買収・改題した上で「東京朝日新聞」としてスタートしています。「めさまし新聞」は1884年に星亨が創刊した自由党機関紙「自由燈」を源流としており、大阪と5年ほどの差があるので、1608号分はこの差ではないかと思われます。

 第3種郵便物認可の日付は東京が1892年3月11日、大阪が同17日、名古屋が1950年2月1日です。

 第3種郵便物 新聞や雑誌など定期刊行物として安い郵送料で送ることができるよう日本郵便に認可された郵便物を表す区分。1892年に逓信省が始め、現在まで続いている。公職選挙法では選挙期間中の選挙に関する文書図画の頒布禁止規定の例外として、新聞や雑誌による選挙報道・評論を認めているが、この条件の一つに第3種郵便物の認可を受けていることが定められている。

 題字下部には東京紙面のみ編集長のクレジットがあります。

 発行本社で変わるものの最も分かりやすい例が天気予報の地点でしょう。朝日新聞は1面題字横に掲載しています。朝日新聞東京本社版はセット版地域が関東甲静の9都県庁所在地、統合版地域は東北・甲信越の9県庁所在地、大阪本社版セット版地域が関西6府県の県庁所在地と札幌、東京、福岡、那覇、名古屋本社版は東海3県を2地点ずつと浜松、東京、大阪となっています。

 題字地紋や紙齡では大阪と同一だった名古屋本社紙面は、製作機能は大阪ではなく東京に集約されています。締め切り時間が近いセット版を並べました。上から大阪13版、東京13版、名古屋13版です。

 東京と名古屋は見出しやレイアウトが一致していますが、大阪は左上位置の記事が株安ではなく関西電力の金品授受問題になっています。地元の大企業がからむニュースであるということで価値判断を東京よりも重く見たということでしょうか。

(次ページへ続く)